瓢(ひさご)は外形が独特なため絵画を中心にいろいろな題材として取り上げられました。このことは、瓢の形のおもしろさに取材した「瓢鮎図」あるいは「大津絵」があります。もう一つは、ふくべの果肉を割き長い紐状として竹竿に干す風景に取材した「東海道五十三次・水口」あるいは「北斎漫画・甲州」がありますが、ともに画題として絵心を誘うのかも知れません。
江戸時代の中頃になると一般大衆にも絵がもてはやされ、いままでの「肉筆画」から木版により多量に描ける「刷物」が人々の間に普及しました。「東海道五十三次」「北斎漫画」は木版一枚刷の絵として製作されたものです。
今回、参考資料として紹介します国宝「夕顔棚納涼図」は、久隅守景が木下長嘯子の和歌に取材した庶民哲学の最高傑作を残しています。
ここでは、特にふくべを画題として描いた風景を集め紹介していきます。
参考資料 夕顔棚納涼図(久隅守景筆) 二曲一隻 紙本淡彩 縦 149.1 横 165.0 江戸時代 17世紀 東京国立博物館蔵 |
初秋の頃でしょうか、中空には満月が外隅で浮き出され、夕顔のたわわに実る棚の下では、粗い莚を敷いて農夫の一家が夕涼みをしています。淡墨とわずかに施された淡彩で処理された画面からは、爽やかに澄んだ空気の肌あいとともに、日々の慎ましい生活にこそ至福があるという、庶民の哲学さえ感じられます。
各地の物産やその製法を簡潔な説明と写実な挿絵で紹介したものです。近世の産業技術上重要な文献です。「巻之二」において木津かんぴょうの有様を精緻に写しています。
甲州かんぴょうの有様を、北斎は、「十三編」において精緻に描写しています。画家でこのような情景をしかもこれほど丁寧に描いた人は他にありません。人間もよく描けています。おそらく旅の途中で見かけた情景でしょうが、実によく観察して写生しています。作者の働く人々に対する愛情が感じられます。
水口かんぴょうのひなびた風俗が紹介されています。夕顔の実の果肉を細く薄く長く割き、天日に干して保存食とするもので女の仕事なのでしょう。一家の婦女子が総出で余念のない様子がうかがえます。