区財政に占める教育費[図2][図3]

185 ~ 189 / 243ページ
 昭和22年の港区発足以来一貫して、区予算編成に際し重点配当されていたのは教育費である。また、年度によって多少の相違はあるが、その教育費の中で常に大きな割合を占めていたのが学校建築に要した経費である。
 とくに、昭和20年代から30年代前半にかけての教育費は、六・三制義務教育発足にともなう新制中学校校舎、戦災により焼失した小学校校舎の建設にその大半を投入しなければならなかった。加えて、区内流入人口の激増による教室不足が起こった時期でもあった。小・中学校の校舎建築が一段落をみたのは、昭和30年代後半のことであるが、小学校校舎に居住する教員の住宅確保、学校備品の整備、小・中学校への事務職員の配置、教育研究費の充実など依然として教育環境整備についての多くの問題をかかえていた。
 

[図2] 区財政に占める教育費の割合・昭和22年度、28年度、33年度(『港区史』下巻)

 

[図3] 区財政に占める教育費の割合・昭和49~59年度(『港区行政資料集』により作成)

 
 『広報みなと』昭和27年7月号には、補正追加更正予算に占める教育費の割合は68パーセントとあり、同じ昭和29年10月号では、追加予算の94パーセントが教育費であると記している。
 昭和35年には、区内小・中学校すべてに体育館の設置が終わったが、一方では戦災時に焼失することなく存続した小学校校舎の老朽化と、戦後の木造建築校舎の破損が目立ちはじめた。このため、教育予算は引き続き高水準を示し、区財政に占める割合も昭和34年の39・5パーセントを頂点に25パーセントを下回ることはなかった。
 昭和40年代は、教育施設の改善・充実期で青年館建設・中学校校舎体育館改築、教育センター・総合体育館の建設がすすめられた時代である。また、この時期は幼児教育の充実を掲げ区立小学校に幼稚園を次々に併置していったこともあって、教育予算は、昭和42年の38・1パーセントを最高に30パーセント台を維持していた。
 昭和50年代は不況の中ではじまったが、教育予算は高い水準を維持している。昭和51年度の教育予算をみると、区財政に占める割合は26・2パーセントに及ぶ。都心区人口がいわゆるドーナツ化現象により減少を続けているため、就学児童・生徒数は最盛期の半数以下に低下しているにもかかわらず、この水準を保っているのは、学校教育施設の質の向上や、社会教育の充実に努めているためである。
 学校教育施設では、近代的機能をもつ鉄筋コンクリート造りに区内全小・中学校が改築された。さらに都市公害対策の一つとして保健室に空気清浄機と冷暖房機が設けられたり、交通騒音対策として防音と冷房の装置が設けられた。
 また、社会教育の予算が区教育費に占める割合は、17・6パーセントに達している。すなわち、社会教育費5億449万円、社会体育費5億3685万4千円、計10億4134万4千円(昭和51年度現在)とある。この額を人口1人当たりの社会教育費として表わすと、3768円に及んでいる。
 教育費に占める社会教育費の割合は、昭和40年代前半より年々増大しているが、その歳出項目をみると、青少年対策・図書館・社会教育施設・青年館・社会体育施設と幅広い活動がすすめられていることがわかる。
 昭和60年版『港区の教育』によると、昭和60年度港区一般会計の当初予算における歳出は、467億9455万7千円で、このうち、教育費は98億4077万2千円で、総歳出に占める割合は21パーセントとなっている。
 おもな事業項目としては、幼稚園の改築・小・中学校校舎の増改築・屋内運動場の改築・プールの改築・学校施設の緑化・教育機器の充実・給食施設の充実・設備の整備等を学校教育関係で掲げ、社会教育では、学校開放の拡充・郷土資料の保全・国際青年年事業の推進等が目立つ。なお、教育費に占める社会教育費の割合は、社会体育費を含み、16・2パーセントとなっている。
 一般会計の前年度比が3パーセントの増であるのに対し、教育費は17・3パーセントの減少を示しているが、これは小・中学校校舎の増改築が一段落したためである。昭和58年、芝小学校、芝浜中学校、60年青山中学校、氷川小学校、61年麻布小学校が全面改築され、美しい近代的な校舎に脱皮している。とくに、青山中学校は、戦前の陸軍大学校の旧校舎を長年にわたり使用し、増築や改修を繰り返したが、新設は東京オリンピックの折、参加選手の練習用としての体育館のみであったので地域の父母・生徒の喜びは大きかった。
 
関連資料:【文書】教育行政 港区教育費予算及び決算(1)
関連資料:【文書】教育行政 港区教育費予算及び決算(2)
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 教育費の変遷 一般会計決算総額と教育費決算額 (通年)(明治期)(昭和22~38年度)(昭和39年度以降)
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 一般会計決算総額と教育費決算額の割合 (通年)(明治期)(昭和22~38年度)(昭和39年度以降)
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 決算項目別変遷
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 区立幼稚園増改築等の状況
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 区立小学校増改築等の状況
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 区立中学校増改築等の状況
関連資料:【学校教育関連施設】