教育行政の再編成

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 第4節までは、昭和62年(1987)に刊行された旧『港区教育史』の概説に当たる。本節は、旧・教育史が取り上げた昭和60年頃から、平成31年(2019)までを扱っている。令和期刊行の『港区教育史』の新規執筆部分(第7章に相当する第8巻、第9巻)が対象とした年代となり、昭和期の最後の3~4年に加え、平成の全期約31年間を含んでいることとなる。タイトルを「生涯学習の時代」と表したのは、日本の教育行政全体が、「生涯学習」という新たな概念によって再編成されているためである。
 ここでは、大きく二つのパートに分けて、平成期の港区教育史を概観してみることにしよう。前半において、日本全体における教育史の特徴に即して、当該時期の港区の変化について略述する。この時期、第一に、先にも述べたように学校教育から生涯学習を中心として教育行政が再編成され、第二に地方自治体の首長部局が学校教育を主導する体制が整えられることになった。この2点に即して、港区教育の変化を検討してみることにしよう。後半では、日本の同時代の教育史の中でも、港区にやや独自な特徴に注目しておこう。都心部に位置するという地勢の特殊性から、バブル経済による地上げと住民立ち退き、バブル崩壊による地価下落、さらには平成8年頃からの住民の都心回帰という変化を港区は経験した。港区教育史もその中でまた大きな変化を迫られることとなったからである。ここでは区立小中学校の閉校と新設校設立の過程に焦点を当ててみることとしたい。