平成期には、以上のように生涯学習体系としての位置づけからさまざまな教育施策が展開されるようになったことに加え、地方自治体が積極的に学校教育の改革を主導していくようになった点においても特徴的である。そもそも、旧教育基本法第10条は、教育行政の責務について次のように規定していた。
第10条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。
この旧教育基本法第10条は、教育行政は学校の建設など「条件整備」に止め、教育内容について立ち入ってはならないという、いわゆる「内外事項区分論」として機能してきた。それに対して、平成18年(2006)に改正された教育基本法では、次のような改正が行われることになった。
(教育行政)
第16条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない
4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。
改正教育基本法では、条件整備に教育行政の権限を限定する条項はなくなり、それに代わって第16条第2項に見られるように、「教育に関する施策」の「総合的」な「策定」を行政に求めている。さらに続く第17条において、国と地方公共団体に対して「教育振興基本計画」の策定を求めたのである。