共立幼稚園第二分園の設置と内容[図3][図4]

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 港区地域の幼稚園教育は、まず私立幼稚園の開設から始まった。前記の明治16年(1883)の『文部省年報』に、赤坂氷川町の共立幼稚園の第二分園の記事がある。
 この記述における共立幼稚園の第二分園を、赤坂区赤坂氷川町に設置したい旨の許可願が出されたのが、港区地域内での幼稚園にふれた最初のものである。
 共立幼稚園第二分園は、文面どおり、明治16年9月に設置されたが、その後の様子は明らかでない。その許可願は次のようであり、明治17年以前の幼児教育の考え方や保育方法をうかがう手がかりとなるものである。

[図3] 共立幼稚園設置願(東京都公文書館所蔵)


[図4] 共立幼稚園第二分園開園届(東京都公文書館所蔵)

    共立幼稚園第二分園
  明治十六年八月十六日   八等属 加藤 淡
  知事 書記官       学務課
  私立幼稚園設置之儀取調候処不都合之廉無之候間御認可成可然乎此段相伺候也
    案
  書面幼稚園第二分園設置之義認可候事
   但開業之月日ハ更ニ届出ヘシ
   年月日      長官
     私立共立幼稚園第二分園開業願
  一 本園開設ノ旨趣ハ学齢未満ノ児女ヲシテ就園ノ便ヲ得シメ而身体ノ健康ヲ保全シ天賦ノ才美ヲ養成シ善良ノ言行ヲ慣熟セシムルアリ
  一 園名 共立幼稚園第二分園ト称ス
  一 開業場所 赤坂区赤坂氷川町二番地
  一 保育科目
   第一 物品科 器物及動植物ノ各称ヲ称ス
   第二 美麗科 美麗トシテ幼稚ノ好愛スル種々ノ彩色物ヲ称ス
   第三 知識科 観ル所ニ由テ知識ヲ関連スヘキ物体等ヲ称ス
   右三科中ニ包有セル子目左ノ如シ
     六球法 三体法 六法体甲 六法体乙 長方体甲 長方体乙 三角体
     置著法 置環法 図画法 戟紙法 凾紙法 剪紙法 織紙法 組板法
     連板法 組紙法 摺紙法 唱歌 遊戯 説話 体操
  一 保育玩具 幼稚園二十恩物其他開誘適宜ノ玩具ヲ以テ其ノ用ニ充ツ
  一 入園退園規則 幼稚ハ男女ヲ論セス年齢満三年以上学齢以下ノモノトス尤伝染スヘキ疾ニ罹ル者ハ退園セシム
   但入園退園トモ東京住居ノ戸主ヲ以テ証人トス
  一 休日 毎日曜其他大祭及ヒ祝日冬期ハ十二月二十五日ヨリ一月七日マテ夏期ハ七月二十一日ヨリ八月二十日マテトス
  一 入園幼稚ハ百名ヲ以テ定員トス
  一 雇女教師助教トモ五人
   但官立幼稚園保母練習科卒業生ヲ以テ教師トス
  一 女教師心得 教師ハ礼儀ヲ正フシテ幼稚天賦ノ才美ヲ養成シ善良ノ言行ヲ慣熟シ身体ノ健康ヲ保全セシムルヲ以テ主要トス
  一 敷地建家 地坪五十坪 但園庭 家屋八坪七合五勺
  一 園費概算       但年計
   金千弐百円  収入
    是ハ保育料一ヶ月一名金一円此百名分年計如此
   金千弐百円  遣払
    内
   金六百円  職員給料
   金六百円  諸 費
  右之通有之候条開業之儀御許可相成度此段奉願候也
   明治十六年八月六日
          赤坂区赤坂氷川町二番地
          共立幼稚園副幹事 山林八太郎印