商・工2科の内容

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 明治10年に設けられた商業夜学校の大人科課程が実業教育へつながるものであり、内容は次のように定めて実践されたようである。
 
  大人科課程
  前期習業六ヶ月
   読物 日本万国地誌略、生産道案内、諸色識分、形体線度ヲ教フ
   算術 和算、八算、見一、相場割及ヒ洋算数字位取ヲ教フ
   書法 細字速写法ヲ教フ
   帳合法 単記ヲ教フ(商家必要ノ類ニ依ル)
   作文 書状封方、普通手紙ノ文受取書式、諸証券文認方等ヲ授ケ且之ヲ綴ラシム
  後期習業六ヶ月
   読物 経済小学、貿易通史ヲ教フ
   算術 和算差分平均法、利息法及ヒ洋算加減乗除ノ大略ヲ教フ
   書法 前期ニ同シ
   帳合法 複記ヲ教フ(商家必用ノ類ニ依ル)
   作文 公用文ヲ綴ラシム
 
 明治12年に、桜川(芝区)・飯倉(いいぐら)(麻布区)・赤坂(赤坂区)の各学校に設置された府立の庶民夜学校の内容は、次のように学科の課程が3項にわかれ、第1項は商工共通で、それが修了してから商業は第2項へ、工業は第3項へ進むシステムに発展した[注釈1]。
 
  第一項
  講読 東京府地志、日本地志、日本歴史、簡易経済書
  口授 万国地志、簡易物理談、養生説
  算術 八算、見一、相場割、利息算、平均算、損益算、差分、四則混用算及多数ノ寄引算
  習字 名頭、改正消息往来、改正商売往来、万匠往来
  作文 諸証書式(送状受取為換手形約定書ノ類)普通手紙文、公用文、電信文、積書
  第二項 (商業科)
  講読 商業地志、商業沿革史、地文書、商業ニ属スル規則
  記簿 商家仕来帳合、単複帳合法
  口授 商会結社ノ組立、度量衡等総テ商業ニ属スル事項
  実地演習 商業上取引模擬ノ大略
  第三項 (工業科)
  講読 器械書、製造書、百工応用化学書、地質学書、工業ニ属スル規則
  算術記簿 幾何算法、単式帳合大意
  画学 諸線(附諸紋形)、自在法、幾何画法、物品模写、建築製図
  口授 度量衡等工業ニ属スル規則
 
 在学期間は3年で、1科ごとの試験に合格すれば証書が与えられ、全部の証書がそろった時、全科の卒業証書と引き換えられた。
 しかし、夜学校は、あくまで「昼間習業ノ暇ナキ者」への補習的な実業教育であり、実業学校の制度化に継続されるには至らなかった。