教科目と週時数[図8][図9]

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 明治19年(1886)の「小学校令」に基づき、文部省は「小学校ノ学科及其程度」を定めていた。
 その後、同23年の「小学校令」に基づき同24年「小学校教則大綱」を定め、各教科目の教授内容の基準を詳細に示した。
 修身、読書、習字、算術、地理、日本歴史、理科、図画、唱歌、体操、裁縫、手工の順に要旨と教授の要点を述べ、第20条に
 
  小学校長若クハ首席教員ハ小学校教則ニ従ヒ其小学校ニ於テ教授スヘキ各教科目ノ教授細目ヲ定ムヘシ
 
と規定した。普通教育においては、各種各様のやり方による混乱を生じさせないため、なるべく全国一様の程度を規定したいという主旨であった。
 

[図8]小学校教則・明治23年(東京都公文書館所蔵)

 

[図9]麻布区「毎週教科時数」・明治25年(東京都公文書館所蔵)

 尋常小学校の修業年限は「三箇年又ハ四箇年」と示されたが、芝、麻布、赤坂の3区とも4カ年の修業年限を申請し許可を受けた。
 週時数については「十八時以上三十時以下トス」と規定された。
 明治25年5月、麻布区麻布小学校、南山小学校、飯倉(いいぐら)小学校の3校は、示された教科課程に準じた毎週教科時間数を定めた。
 赤坂区も同じように9教科とし、1年25時、2年25時、3年29時、4年29時の課程を編制していた。
 赤坂区青山尋常小学校・青山高等小学校は、明治25年6月教科課程を[図10][図11]の資料のように届け出ている。明治36年まで港区地域の14校のほとんどが高等小学校を併置していたので、ほぼ同様の課程で教育が進められていたことが推測できる。
 

[図10]青山尋常小学校教科課程表・明治25年(東京都公文書館所蔵)

 

[図11]青山高等小学校教科課程表・明治25年(東京都公文書館所蔵)

 また、「尋常小学校又は高等小学校ニ補習科ヲ置クコトヲ得」(明治23年「小学校令」第7条)とされていた補習科の趣旨は、「其既修ノ教科目中応用最モ広キモノヲ練習補充セシメ兼ネテ其将来ノ生活上ニ必須ナル事項ヲ加へ授ケ務メテ実用ニ資セシメントスルニ在」った[注釈2]。
 尋常小学校補習科の教科目は、「修身、読書、作文、習字及算術」とし「日本地理、日本歴史、理科、図画、手工ノ一科目若クハ数科目ヲ加へ女児ノ為メニハ裁縫ヲ加フルコト」[注釈3]ができるものとした。
 芝区では[図12]のような週時数が許可されている。
 

[図12]芝区「尋常小学校授業時間配当」・明治28年(東京都公文書館所蔵)

 

[図13]改築のための桜田、南桜の2部授業・明治32年(東京都公文書館所蔵)

 週時数の変更については、その都度届出がされた。就学児の増加や、校舎改築にせまられて2部授業を余儀なくされた学校からは、[図13]のような届出が出された。
 これらの文書が出された時は校舎増改築がさかんに行われた時期であった。このような届出は、鞆絵(ともえ)小・飯倉小・麻布小学校からも出されている。
 芝区白金小学校は、明治22年5月、荏原(えばら)郡より芝区に移管が決まり尋常小学校の補習科を置いていた。加うべき科目として日本地理、日本歴史、図画、裁縫とし、修業年限を2年としていたが、高等小学校併置の運動を熱心に進め明治30年に至り補習科を廃止して高等小学校を併置した[図14][図15]。その喜びの様子が学校沿革誌に詳しく記録されている。
 これによって港区地域の公立小学校はすべて尋常小学校と高等小学校の併置校となった。新しい設置願の文書から明治30年ごろの高等小学校の教材や時間配当、教具類の概要をうかがい知ることができる[図16][図17]。
 

[図14]白金小学校の補習科廃止と高等科併置・明治30年(東京都公文書館所蔵)

 

[図15]白金小学校高等小学校科併置・明治30年(東京都公文書館所蔵)

 

[図16]白金高等小学校「各教科目、時数配当」・明治30年(東京都公文書館所蔵)

 

[図17]白金高等小学校「教授器具等」・明治30年(東京都公文書館所蔵)

 明治33年「小学校令」が改正され、尋常小学校の教科目は「修身、国語、算術、体操」とし、「図画、唱歌、手工ノ一科目又ハ数科目ヲ加へ、女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フ」ることができるとした(同第20条)。修業年限は4年と定め、補習科の設置も認めた[図18][図19]。
 

[図18]毎週教授時数ノ配当(『青山小学校要覧』明治40年1月)第一条 尋常小学科ニ於ケル各教科目ノ毎週教授時数左ノ如シ(第二細則)

備考 尋常一学年ハ月水金ヲ四時火木ヲ三時トス
   同 二学年ハ火曜ヲ五時土曜ヲ四時宛トス
   同 三四学年ハ水曜ヲ四時土曜ヲ三時其他五時宛トス


 

[図19]毎週教授時数ノ配当(『青山小学校要覧』明治40年1月)第二条 高等小学科ニ於ケル各教科目ノ毎週教授時数ハ左ノ如シ

備考 女ハ火金ノ両日六時間ヅヽ男ハ火曜六時間土曜ハ各三時間他ハ五時間ヅヽトス


 明治40年3月の「小学校令」改正では、尋常小学校の修業年限が延長され、6カ年となった。小学校の修業年限延長はこれまでの高等小学校の第1学年、第2学年を移したものに他ならなかった。したがって、小学校の教科目に多少の取捨はあったものの、高等小学校の第1学年、第2学年の教科目を加えたものとなった。
 
  第十九条 尋常小学校ノ教科目ハ修身、国語、算術、日本歴史、地理、理科、図画、唱歌、体操トシ女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フ
   土地ノ情況ニ依リ手工ヲ加フルコトヲ得
 
 手工は教育効果顕著なものであるとして将来必須になる科目であるので、できるだけ加えるようにと勧めていた。
 
関連資料:【文書】小学校教育 赤坂区小学校修業年限
関連資料:【文書】小学校教育 麻布区小学校修業年限
関連資料:【文書】小学校教育 芝区小学校修業年限
関連資料:【文書】小学校教育 教科目及教授に関する規程