学級編制

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 明治23年の「小学校令」に基づき、翌年11月に学級編制について定められたが、その主旨は「専ラ学校ノ経済ニ注意シ其費用ヲ減省シテ成ルヘク良好ナル教育ノ成績ヲ得」ることであった[注釈4]。これまでは、1年級、2年級というように等級を表わす編制であったのを改め、1学級は1学年の児童を以て編制することを明らかにした。
 当時としては正教員の資格を有する者が少なく、必要数を確保するのがむずかしいという状況と、市町村の経済的な事情とにより、児童数100人までは1学級とし、単級に編制することを認められたのである。
 「全校女児ノ数一学級ヲ組織スルニ足ルトキハ男女学級ヲ別ツヘシ」[注釈5]とされ女児は男児と区別して教育するのが当然であるというのが当時の考え方であった。
 [図20][図21]は、芝区桜田小学校のものと、赤坂区赤坂小学校のものである。
 

[図20]桜田小学校学級組織表・明治37年5月末調

 

[図21]赤坂小学校学級組織表

 施設も十分整わず、教員も少なく、経済的な裏づけも乏しい中で、現場での対応は大変であった。補助金のない私立小学校については、「適宜学級ヲ編制スヘシ」とし、ただし100人を超えてはならないと規定した。明治33年の改正では、学級編制について次のように定められた。
 
  小学校ノ学級数ハ十二学級以下トス
  特別ノ事情ニ依リ小学校ニ於テ分教場ヲ設クルトキハ一分教場ノ学級数ハ二学級以下トシ前項ノ制限外ト為スコトヲ得[注釈6]
 
 就学率が向上し、児童数の増加に伴う校舎増築、分校設置が、本区でもしきりに行われた。鞆絵小学校では明治35年児童数1085名を数えていた。施設や教員の面から一度に教えることは困難であった。学校沿革誌によると、2部教授の記事は、明治39年だけでも、御田(みた)、桜川、南海、飯倉の4校を数える[注釈7]。
 明治40年、鞆絵小学校は、校舎の改築を始めたが、その間、児童を桜田、南海、愛宕の3校に分け、全部2部授業とし、更に新築した西桜小学校の校舎を借りて授業を続けた[図22]。41年、校舎落成時の学級数24学級、児童数は1543名、職員26名であり、ようやく1学級平均64人余に緩和できた。
 

[図22]改築のための授業時数変更届・鞆絵小学校(東京都公文書館所蔵)

 明治40年の「小学校令」改正による義務年限延長に伴い、学級数の増加が必然的であった。
愛宕尋常小学校の校舎全部を仮に用いて愛宕高等小学校を創立した。また、芝小学校は2部教授を行うこととなった。
 学級編制の基本的方針は変わらず、児童数の状況により男女別学級編制を行った。これが学級数を増加し教室の不足を来す原因ともなっていた。
 明治43年の筓(こうがい)小学校『学校梗概(こうがい)』には、男女別学級編制について次のように記している。
 
  学校編制ニ関シテハ勅令及ビ省令等ニヨリテ決定セラレ学校ハ何等任意ノ方法ヲ講ズルヲ得ズ 然リト雖(イエド)モ定メラレタル編制ヲ研究ノ対象トシテ其ノ間ノ利害ヲ比較研究シ或ハ止ムヲ得ザル場合ノ編制ニ際会セバ是ノ機ヲ失セズ従来ノ方法ト他ノ方法トノ得失ヲ比較シ研究上ノ参考タラシメン事ヲ努メタリ
    イ 男女別学級ノ利トスル点
  一 心理上男児ト女児ハ発達ノ楷梯(カイテイ)ヲ異ニシ知識ノ程度ニ於テ差アリ男児ハ一般ニ推理的ニシテ女児ハ器機的也前者ハ酒落(シャラク)的ニシテ後者ハ執着(シュウチャク)的也一方ハ果断ニシテ他ハ優柔ナリ一方ハ大胆ニシテ一方ハ小心ナリ
  二 生理上男児ト女児ハ発育ノ状態ヲ異ニシ従ツテ女児ハ男児ニ比シ体力ニ於テ劣ル特ニ我国ノ女子ニアリテハ其差異甚シキモノアリコレカ救済ヲ講ズルハ目下ノ急務トス
  三 教育上同一学級ニ男児ト女児ヲ収容スル際ニハ教科書教材ノ配当概シテ男児ニ偏セルヲ以テ一般教授ノ比較的男児ニ偏スルノ嫌(キライ)アリ
    ロ 同一学級ニ男女児ヲ収容スルノ利トスル点
  一 社会現象ニ於テハ性別ノ必要ヲ認メズ従ツテ女児ト雖男児ノ一半ヲ知ルヲ要シ男子ト雖女子ノ一半ヲ知ルヲ要ス 況(イワ)ンヤ児童ノ家庭ニ於テ男女混同ノ兄弟姉妹中ニ生育シ何等ノ欠点ヲ見出スコトナク反(カエ)ツテ男性ノミノ兄弟中生立チタル児童ハ粗暴ニ流レ女性ノミノ中ニ生立チタル女児ハ柔弱(ニュウジャク)ニ陥ルノ弊アルモノノ如シ
  二 従来ノ女児ノ柔弱ノ弊アルハ前述ノ如ク男児ノ粗暴ナルモ前述ノ如シコノ両点ヲ程ヨク調和シテ女児ヲシテ快活ノ気象ヲ養ヒ男児ヲシテ綿密ノ気風ヲ涵(カン)養セシム
  三 実験ノ結果教授ノ際ニ当リ性別学級ヨリモ混同学級ノ方注意ノ程度及ビ持続時長シ
   而シテ其不利益トスル点ニアリテハ甲ノ利トスル所ハ乙ノ不利ナルガ如シ依リテ此等ノ数点ヲ比較観察スルトキハ後者ノ優クルヲ知ル若シ法規ヲシテ改正ノ余地アラシメバ後者ヲ取ランカ
   能力別編制ヲ採ラザル理由
    イ 児童ノ能力ヲ識別スルノ困難ナルコト
    ロ 児童ノ能力ハ静止ノ状態ニアラザルコト 従ツテ編制変更ノ煩瑣(ハンサ)ナルヲ免レザルコト
    ハ 父兄ノ感情上面白カラザルコト
    ニ 児童ノ向上発展ノ思想ヲ阻止スルコト
    ホ 経済上、理想的ニ児童ノ数ヲ制限シテ学級ヲ組織シ得ザルコト
    ヘ 社会的ニ観察スルトキハカヽル区別無用ナルガ如シ
 
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