教科目と週時数[図25][図26][図27][図28]

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 明治23年(1890)の「小学校令」により、尋常(じんじょう)小学校3~4年に続く2、3、4年の高等小学校については、次のように定められた。
 
  高等小学校ノ教科目ハ修身読書作文習字算術日本地理日本歴史外国地理理科図画唱歌体操トス女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フルモノトス
  土地ノ情況ニ依リ外国地理唱歌ノ一科目若クハ二科目ヲ欠クコトヲ得又幾何ノ初歩外国語農業商業手工ノ一科目若クハ数科目ヲ加フルコトヲ得(同第4条)
 
 週時数については毎週「二十四時以上三十六時以下」[注釈9]とされた。
 明治25年港区地域の各高等科は外国語授業を行ったことを記録している。この外国語とは、ほとんどが英語である。赤坂区中之町小学校高等科では、明治27年にまず男子に英語を教授し始め、同29年になってから女子にも教授した。麻布区麻布小学校高等科では、男子全員と女子は希望者とした。明治32年同窓会寄贈にかかる麻布小学校々旗は麻布小学校の頭文字AとSを組み合わせたものであった。週時数を見ると、芝区は外国語を週3時間、麻布区は2時間としている。
 芝区では、算術科の中に日用簿記を加えるなど、その地域性をとらえた教科の編制をしていることがわかる。
 

[図25]芝区「毎週授業時間と教科目程度」・明治25年

 

[図26]芝区「高等小学校教科目と時間配当」(東京都公文書館所蔵)

 

[図27]麻布区「高等小学校教科課程表」(東京都公文書館所蔵)

 

[図28]高等小学校教科・時間配当表(東京都公文書館所蔵)

 明治33年の「小学校令」では、高等科の教科目は修身、国語、算術、日本歴史、地理、理科、図画、唱歌、体操とし、「女児ノ為ニハ裁縫ヲ加フ」と定めた。修業年限が一定していなかったので、修業年限2年の高等小学校では「理科」「唱歌」の1科目か2科目を欠くことや「手工」を加えることを認め、修業年限3年のものについては「唱歌」を欠くことや「農業」「商業」「手工」を加えることを認めた。
 修業年限4年のものについては「英語」を加えることができた。
 港区地域の各小学校高等科は、みな4カ年であった(赤坂区中之町高等小学校は、明治28年3年制としたが翌年4年制となる)。尋常科と同様、この改正では教科目の整理をし、数を減らし教授上の能率を上げることをねらったものであった。各教科の教授内容も示しているが、そのうち英語をとりあげてみると次のとおりである。
 
 英語ハ簡易ナル会話ヲ為シ又近易ナル文章ヲ理解スルヲ得シメ処世ニ資スルヲ以テ要旨トス(中略)英語ヲ授クルニハ常ニ実用ヲ主トシ又発音ニ注意シ正シキ国語ヲ以テ訳解セシメンコトヲ務ムヘシ
 
 明治40年の「小学校令」改正で、尋常小学校は6年までとなった。従来の高等科の1、2年を尋常科に移行し、義務年限を延長し、その上に高等科を置くことになった。
 農業、商業の教育には実習地の設備が必要であるとし、実地に応用できるためには、実習による教授の大切さをも訓令した。赤坂区青山小学校では、明治45年加設科目として商業科を加えている。