教員としての生徒に接する態度、指導上の配慮、教育者の責任、職員の協力体制などについて、就学率50パーセントを超えて発展しつつある学校教育の現状の中での教職員の問題点を指摘しているものともいえる。
「服務規則」は、小学校教員の職務を、教育勅語の具体的な実現を使命とし、基本としたものであった。校長の校務の整理、教員の監督の責任は明確になり、地域における教育の責任も重大さを加えていた。
明治41年の『赤坂小学校校規』によると職員の服務については、次のように記載されている。
第一条 職員ハ教育ニ関スル諸法令并ニ本校所定ノ諸規程ヲ遵守スベシ
第二条 職員ハ始業時前十五分ニ出勤シ終業后一時ヲ経テ退散スベシ
但翌日ノ諸準備ヲ終ヘシモノハ時間内ト雖退散スルコトヲ得
第三条 職員出勤ノ際ハ直ニ出勤簿ニ捺印スベシ
第四条 職員出勤及退散ノ際ハ必ズ出勤札ヲカヘスベシ
第五条 欠勤及遅刻セントスルトキハ始業前ニ当日所用ノ書類ヲ添ヘテ届出スべシ
第六条 課業ヲ変更シ或ハ教授時間ヲ伸縮シ又ハ児童ヲ校外ニ引率セントスルトキハ学校長ノ承認ヲ受クべシ
第七条 訓育上特殊ノ方法ヲ施サントスルトキハ学校長ノ承認ヲ受クベシ但其成績ヲ報告スルモノトス
第八条 児童保護者ヲ喚(ヨ)ビ出シ又ハ学校ノ名義ヲ以テ文書ノ往復ヲナサントスルトキハ学校長ノ承認ヲ受クベシ
第九条 職員勤務ノ服装ハ男教員ニアリテハ洋服タルベク女教員ニアリテハ洋服又ハ着袴筒袖(チャッコツツソデ)トス
但他ノ服ヲ用フルトキハ其事由ヲ申出スべシ
学校長の職務として、
一 校規ノ制定、二 教授細目ノ編製、三 教授時間割ノ認承、四 校務分掌者学級主任及受持教科ノ決定、五 職員ノ分任セル教務及庶務ノ指揮監督、六 児童入退学ノ処弁、七 卒業修業ノ認定、八 学校沿革ニ関スル件、九 性行不良ノ児童及伝染病者及其虞アル児童ノ処置、十 家族又ハ近家ニ伝染病者アル児童及伝染病流行地ヲ通過スル児童ノ処置、十一 職員ニ缺員ヲ生ジタルトキ其補缺ニ関スル件、十二 諸表簿及成績簿并ニ教案ノ総検閲、十三 職員会ニ提出スベキ議題ノ立案及他職員ヨリ提出ニ関スル議題ノ処理 十四 校舎校地ノ取締、十五 職員及児童ニ対スル訓示、十六 其他重要事項
学級主任の職務として、
一 児童ノ訓育、二 成績考査、三 児童ノ出席調査、四 学籍簿ノ調製及整理、五 児童観察録ノ調製及整理、六 児童ノ缺席督促、七 教室ノ整頓、八 児童身体検査及衛生ニ関スル件、九 証書賞状等ノ調製、十 其他重要教務
ここの学級主任とは学級担任のことである。児童の訓育については、また別に種々の規定が設けられた。
校内責務分担について見ると、明治37年の麻布小学校の記録には、
一 監督長、二 書籍係、三 器機標本係、四 器具係(机、椅子、硯、算盤類)、五 互助教授係、六 衛生係、七 官報雑誌係、八 公報新聞係、九 学校日誌係、十 月末表係、十一 児童日々出欠係、十二 職員出欠表簿係、十三 記録並印刷係、十四 遺失物係、十五 控室整頓係、十六 記録並学籍簿整理係、十七 諸表簿整頓係、十八 体操用具係、十九 裁縫用具係、二十 唱歌用具係、二十一 級長、組長控簿係
があげられ、また筓(こうがい)小学校の記録にも、同様に細かく記されている[注釈17]。使丁(してい)についても細かに勤務内容を規定し、日々の勤務として、
一 時報ヲ正シクスルコト、二 戸締ヲ厳重ニスルコト、三 毎時ニ廊下ヲ掃クコト、四 毎時運動場ノ紙屑ヲ捨ヒ取ルコト、五 時々廊下運動場ニ撒水スルコト、六 手洗水ヲ絶エズ供給スルコト、七 飲料ノ供給ニ注意スルコト、八 下駄傘置場附近ヲ掃クコト(『筓小学校梗概』)
と記され、さらに「毎朝ノ勤務、午餐際時ノ勤務、終業後ノ勤務、雨天際ノ勤務、特殊勤務」を定めている。給仕の職務は、
一 毎朝職員室及応接室ノ机上ヲ掃拭スルコト、二 毎日職員室及応接室ノ窓硝子(ガラス)ヲ払拭(フッショク)スルコト、三 毎時間下駄箱及草履箱ヲ整頓スルコト、四 毎朝各教室ヲ見廻り白墨ノ供給ニ注意スルコト
などであった。
[図23]小学校宿直細則・明治33年飯倉小学校(『飯倉小学校校誌』)
明治33年より設置された宿直制[図23]は、まず第一に御真影の保護を目的として掲げたが、これに先立って同32年に実施された青山小学校の宿直はそのころ頻繁に起った校舎内への侵入者に対する自衛が目的であった。
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