国民道徳のひきしめ

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 日露戦争後、産業の近代化が急速に進み、資本家と労働者の新しい関係も生じ、争議が増した。一方、文明開化の流れは、生活や思想、宗教への影響も多く、従来の、修身科や教育勅語に象徴される儒教(じゅきょう)主義の国民道徳がおびやかされていた。政府は、この動きを危惧して、学校教育だけでなく、国民一般の思想善導をめざす教育の重要さに気づき、その強化に取りかかっていった。新しい思想を危険思想として取り締まりを強める一方、通俗教育の行政的対策に取りかかった。明治も末になってからのことである。