同時に、本章に示された事実は、上記のような行財政の展開や社会の変化を背景として理解できる部分も多い。例えば、明治期から継続する小学校の新設動向(第1節第6項)、施設の不足による2部授業の実施と解消への取り組み(第1節第6項)などである。教員の待遇改善(第3節第1項)の背景には、「市町村義務教育費国庫負担法」(大正7年)によって小学校教員の給与費の一部を国庫負担としたことの上に、上述の通り、区が負担する給与費を市の負担としたことがある。また、上級学校の受験準備が、制度的には区別されない公立小学校のうち特定の学校で隆盛となったこと(第1節第4項)、すなわち上級学校に進学する見込みの子どもが特定の学校に集まるようになったことも、上記を背景として理解できるだろう。
(吉田昌弘・淑徳大学教授)