教授充実の留意点

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 学校の一般的方針や教授の方針を達成するため、人的、物的な環境や施設、設備の改善に視点がそそがれた[図8]。このことに関しては、大正7年(1918)に国民教育振興に関する東京府訓令[注釈3]を受けて各学校が立てた方針[注釈4]の中で教授充実へのいくつかの留意点として述べられている。例えば、麻布小学校の場合では、次のように述べられている。
 
   教授ノ方法ヲ一層適切ナラシム方策
  一 修身科歴史科ノ教弁物ヲ整理シ以テ尊皇愛国ノ志操ヲ涵養スルト共ニ立憲治下ノ国民タル思想ノ養成ニ資スベキコト
  二 地理科図工科手工科ノ教弁物ヲ整備シ以テ産業思想及経済思想ノ発達ヲ図リ兼ネテ創作力及殖民的智識ヲ養フコト
  三 理科ノ教弁物ヲ整備シ以テ工夫創作ノ才能ト応用力トヲ養フコト
  四 理科及手工科(可成図工科モ)ノ特別教室ヲ設備スルヲ要ス
  五 児童ノ理科実験器械ヲ完備スルヲ要ス
  六 現在ノ諸設備ニ於テ教授管理上不便ノ点多々アリ漸次改良ヲ要ス
  七 二部教授ヲ撤廃スルコト
  八 一学級収容児童数ヲ五十名以内ニ減少スルコトヲ要ス
  九 適当ニ予習復習ヲ命ジ又ハ宿題ヲ課スルコト(勿論細心ノ用意ヲ以テ指導ヲ与フベシ)
  十一 高学年ニ在リテハ理科、図工科及手工科ニツキ所謂教科担任ヲ加味シテ以テ学力ノ増進ヲ図ルヲ可トス
  十二 校外教授実地見学ノ度数ヲ多クスルコト
  十三 児童図書室ヲ完備シテ益々読書ノ趣味ヲ高メ自学自修ノ良習慣ヲ養フコト
  十四 掲示的示物教育方法ヲ整備シテ常識ヲ豊富ニシ且実際的智識ヲ養フコト
 
 ここには、学校経営の全般にわたる教授充実への改善の重点が述べられていて、その実現に努力を重ねたことがうかがわれる。
 

[図8]藤だなの下で体操(『南山小学校創立100年記念』)

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