児童会の活動[注釈7]

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 大正期に発足した児童の自治活動は当時各地で行われていたようであるが港区地域でも次のように自治訓練を計画的に実施していた記録がある。
 青南小学校の自治的訓練の実際(『青南学報』第2号、大正11年)
 青南小学校は大正10年春から自治訓練を実施している。この自治訓練を開始するまでには1年有半にわたり学級委員会を13回、級長会議を13回、学級委員総会を8回開き自治活動や自治組織の理解を深めさせ自治的気分をみなぎらせ実行上の準備をしての発足である。
 自治訓練のねらいは、自律的精神を培(つちか)い自己の生活を開拓すること、責任を自覚させ、公正な社会人としての能力を育てることなどにある。故に個人の自治と学級自治の基礎的素養の訓練に努めた。
 次に自治活動の組織並びに活動の一端を眺めてみよう[図10]。
 

[図10]筓小学校の自治活動組織(校報誌『かうがい』第11号・大正12年6月より)

 
  青南小学校の自治会
  一 学級自治会(第五学年以上)
   一 組織 当該学級全児童
   二 役員 議長 一名、副議長 一名、役員以外から互選し任期を一学期と定む。
   三 会議 毎月一回第二週の修身科の時間に行ふ。
   四 議案 学級担任訓導又は児童提出。
   五 処理 決議事項は担任訓導の許可を受け、級長から口頭で其の学級に公布実施する事。
 二 学校自治会
  一 組織 学級委員及学級自治会正副議長、第四学年以上正副級長
  二 役員 議長 一名、副議長 一名
     学級自治会正副議長の互選とし任期を一学期とするも別に委員六名を置き開催当時の週番を之に充てゝ会議の事務を処理させる。
  三 会議 毎学期始めから隔月第三木曜日放課後に開催するものとする。
     但臨時会を開催することが出来る。
  四 議案
             学級自治会
      イ 討議事項 第四学年以下各学級 提案
             学級委員
      ロ 諮問事項 学校提案
  五 処理 決議事項は学校長の認可を経て週番から一般に公布全校に実施するものとする。
  六 備考 イ 校長以下職員は会議に臨み参考意見を述ぶることを得るものとする。
       ロ 議長は開会三日前、会議の場所、時間、内容を公告するものとする。
       ハ 本校児童は本則として傍聴することを得るものとする。
 
 大正11年10月より学校及び学級自治会の組織が整備され、自治訓練の指導が充実されてきたことを示している。なお、自治訓練の成果について『青南学報』第2号には次のように述べている。
 
   今、自治訓練実施後、児童の精神的方面に現はれた成果に就いて概観すると次のやうであります。
  1 選挙を重んずる風を生じたこと。
  2 自分のことは自分で始末する風習を強くしたこと。
  3 上級生が義務的に下級生の面倒を見るやうになったこと。
  4 共同一致の精神を向上させたこと。
  5 自己の所感を遠慮なく発表するやうになったこと。
  6 責任義務の観念からして自重心を増したこと。
  7 女児も進取的気風を増したこと等。
 
 以上、大正期に発足した児童会(自治会)の指導について、青南小学校と筓(こうがい)小学校の資料を中心に記述してきたが大正10年ごろから、港区地域の各校でも自治会活動の訓練が導入されたものと推測される。
 指導の時間として、学級自治会は修身の時間に行われたが、道徳的実践の場として活用されたのであろう。また、学校自治会は、放課後に実施されていた。
 
関連資料:【くらしと教育編】第7章第3節(2) 新教育に積極的な小学校