芝区・麻布区・赤坂区ともに、10月中旬に学校の教育活動は再開された[注釈7]。授業再開に至る経過の一部は前述したとおりであるが、授業再開の様子についてはなお次の記録があげられる。
授業再開までのようす
一〇月六日、児童一同桜川バラックヘ参集するよう各所に掲示し、また職員は焼跡に点々と建てられたバラックを訪問して、見舞を述ぶると共に授業再開の旨を通知したり、而(しこう)して当日集りし児童四五三名なりき。災害前の児童数一四二四名に対し三〇パーセント減なり。こえて一〇月一一日第二回召集を行い、一三日集会し、一五日より次の各教室で授業を開始することを申渡せり。
一・二年 芝小学校、三・四年 芝中学校、五・六年 聖坂小学校
なお、同日本校事務所を白金小学校より桜川バラック校舎内に移したり。一〇月一三日児童を右仮設教室に引率したり。(『桜川小学校百周年記念誌』)
焼失校も非焼失校も、同じ頃に、授業を再開している。焼失校の桜川小学校は震災前に比べ児童数減少の状況で授業再開となった。一方、非焼失校の各小学校は学級数増加となり、2部授業を余儀なくされている。地域内、いずれの学校も震災の影響を大きく受けた授業再開であった。
震災前の学校環境と比べようもない劣悪な状況の中で、各校が校長を中心に一致団結して児童の指導に当たった様子も読みとれるのである。
私立学校のうち、聖心女子学院小学校、同附属幼稚園の校舎は大半破壊されたが、校舎を急造し、バラックと天幕内で10月1日から授業が開始されている。また頌栄(しょうえい)幼稚園は火災は免れたが多少の被害があったものの9月11日から授業を再開した。
関連資料:【文書】教職員 関東大震災に関する桜川小学校の記録