前述した施行規則における保育内容について、各幼稚園で行われていた実態から、その概要を述べる。
■遊戯
保育5項目の最初にとり上げられた遊戯は自由遊びと律動遊びが含まれている。前者には鬼ごっこ、かくれんぼ、すべり台、ジャングルジムを使った遊びなど、後者にはリトミック、ダンス、音楽や唱歌を伴った集団遊戯などがあった。
■唱歌
遊戯と一緒になって歌うもので、「お手々つないで」「むすんでひらいて」「ひらいたひらいた」など幼児に分りやすい歌詞のものが歌われた。
■観察
新しい保育項目である。理科的意味の観察に限定せず自然物や日常の器具物品その他人事に関する観察である。家畜の飼育、草花の栽培、金魚の飼育・水栽培などが行われるようになった。この保育項目内容の研究が盛んになり昭和5年(1930)の全国保育大会に調査報告が行われた。
■談話
昔話、童話、科学的知識や教訓的な話などで、例えば桃太郎、乃木大将、天長節(てんちょうせつ)の話、3月節句の話など、また創作童話や幼稚園によっては聖書の話、シャカの話などが行われた。談話は、集会で行われることが多かった。これを保育の中心をなすと考えていた幼稚園もあった。
■手技
恩物(おんぶつ)(遊具)をそのまま用いることは少なくなり、紙、きびがら、麦わら、竹、落葉、粘土などを用い折紙、貼紙をはじめ、ごっこ遊びの動物園の製作や自由画なども重視された。その他の園外保育、読み方、数え方、生活訓練など、保育内容の多様化と指導法の充実が展開されていった。