■私立南町幼稚園

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 園児定員を30名とし、満5年以上の組と満4、3年組の2組に分けて保育している。1週間の保育内容と保育時間は[図9]のとおりである。
 

[図9]1週間の保育時間表

 
 保育時間は毎日4時間半であり、季節により始業時刻をきめ細かに定めている。夏季(7月11日から9月まで)は午前8時半から、9月下旬から12月までは午前8時から、1月から2月にかけては9時半始業、3月から7月上旬は午前9時になっている。休業日は祝日、大祭日、皇后陛下御誕生日、靖国神社祭祝日、幼稚園開園記念日、氏神神明社祭礼日、夏季休業日(7月21日から8月15日まで)冬季休業日(12月26日から1月8日まで)、春季休業(3月26日から3月21日まで)である。
 私立幼稚園は各幼稚園の特色をもちながらも、基本的な日々の生活はほとんど似たものであった。
 私立南高輪幼稚園(後の森村学園幼稚園)に大正8年に就職した沢田多計は『森村学園六十年史』に当時の幼稚園の生活を回想して、次のように述べている。
 
  正面廊下の右側には、三の組、二の組、一の組と保育室が並び、一番奥に広い遊戯室があった。遊戯室に牛若丸が日の丸の扇をかざして五条橋の欄干におどり上がり、下で弁慶が大長刀を振っている大きな額がかかっていた。廊下の左側はお庭で広い砂場があり、砂場の隅に見事な藤が砂場一杯に枝を拡げていて、五月になればしだれる花を見上げ、冬になれば花のとれた棒で亀さんを編んで遊んだものだった。桜の花の満開の時にはお池に行き芝生でお弁当をいただき、秋にはお山でドングリを拾い、菊畑の竿にとまっている赤トンボをつかまえたり、春さきお山の穴ぼこでまだ冬眠している蛙を見つけたり、何時も子供は自然の中でさんさんとした太陽の光に浴し、きれいな空気を吸って楽しいお勉強をした。今思えば夢の様な楽園であった(後略)