大正期の産業教育の急速な発展のもう一つの要因は、臨時教育会議の答申であろう。臨時教育会議は実業教育の改善に関して次のような答申を行っている。
実業学校に関する制度は、明治後期に成立した現行制度を改める必要のないことを述べた上、8項目の振興策について強調している。すなわち、実業教育の振興発達を図るため、国庫補助の増額その他適正な奨励策を講ずること、実業学校においては技能に偏らず徳育に一層の力を用い人格の陶冶(とうや)に努むること、実業教育に関する行政機関を整備すること、実業学校に関する規定は一層緩め実際に適切にすること、実業学校教員の待遇を急いで改善すること、実業学校と実業界連絡を密にし相互の協力を促進すること、実業補習教育の義務化を図ること、実業補習学校のうち特に程度の高いものは制度上別に扱いその職員の待遇についても規定をもうけること、などとなっている。
[図1]三田の商工業地域(『港区史』下巻)