実業教育関係法令が臨時教育会議の答申を受け、これに基づいて次々と改正され新しい実業教育のよりどころとなった。大正期のこうした法令の改正は、専ら中等段階の実業教育機関の整備に重点がおかれていることが特色である。
「実業学校令」は明治32年(1899)2月7日制定(勅令第29号)された法令であるが大正9年(1920)12月16日改正(勅令第564号)公布された。主な改正点は、
(1)目的の中に徳性の涵養(かんよう)をつけ加えたこと。
(2)徒弟学校を廃止し、従来の徒弟学校を工業学校の一種としたこと。
(3)実業補習学校の設立の主体を商業会議所・農会・その他これに準ずる公共団体と範囲を広げたこと。
(4)実業補習学校の職員の名称・待遇を中等学校に準ずるとしたこと。
などである。
「実業学校令」の改正にともない、工業・農業などの実業学校規程も改正された。主な改正点は、それまでの実業学校の甲種・乙種の区別を廃止したこと、教育内容・方法についての規程を改善したことなどである。
「実業補習学校規程」は明治26年(1893)11月22日文部省令第16号を以て制定されたものであるが、大正9年(1920)「実業学校令」の改正と同時に改正された。主な改正点は、補習教育から職業教育、公民教育へ重点を置き換えたこと、教員の名称待遇を中等学校に準ずることとしたこと、学科内容の重点や授業時間の標準を明確にしたこと、女子に関する規程をもりこんだこと、高等の実業補習学校の設置や卒業後の学習についても規程していること、などである。
実業補習学校関係の法令にはこの他実業補習学校の専任教員の確保や養成について規定した「実業補習学校教員養成所令」が大正9年に公布され、更に大正10年には「実業補習教育主事規定」が制定されている。また翌11年には実業補習学校の学科課程編成の標準を示した「実業補習学校標準学科課程」が制定され、更に大正13年には、「実業補習学校公民科教授要綱並其ノ教授要旨」が示され、公民科の内容が定められた。
大正10年1月には「職業学校規程」が新たに制定された。この規程は、裁縫・手芸・割烹・写真・簿記・通信術その他特殊学科を中心にした従来の実業学校とは別の実業教育を行う職業学校について規程したものである。