■施設・設備
前述の東京府訓令第31号の準則の補習教育の場所の項に「成ルベク小学校舎を充用スルコト」とあるが、大正期もこの考えは変らないものと思われる。どの学校も地域の尋常小学校に設置され夜間に授業が行われている。このことは施設・設備を小学校と共用する点で財政上もきわめて工夫された方法である。財政上かなり苦しい中で急速に補習学校が設置されたのもこの様な対策の成果と考えられる。また教科書なども高等小学校、実業学校、中・女学校教科書の中から適切なものを選ぶこととし高尚に流れないこととされ運用されてきている。
[図10]大正12年度東京市芝区三光商工学校収支予算 歳入
[図11]大正12年度東京市芝区三光商工学校収支予算 経常部
[図10]は芝区三光商工学校の予算書である。
この表の示すように、実業補習学校費の歳入は、授業料と府・市の補助金と区費から成立っている。また歳出([図11]参照)のうち給料諸手当の占める割合が約50パーセントで、他が需要費、雑費などで、備品費の少ないことや、暖房費が全く計上されていないことなどは注目される。
■教職員
実業補習学校の教員についても、「成ルベク当該市町村立小学校ニ在職ノ教員タルベクコト」[注釈14]とされ、小学校長が実業補習学校の校長を兼務し、専任教員は1名程度とし、他は兼任または嘱託教員が当てられている。