「青年訓練所令」は大正15年(1926)4月20日勅令第70号をもって公布された。この訓練所令は、大正13年の文政審議会の「一六歳以上の青年に軍事教練の基礎訓練と精神陶冶(とうや)を目的とする訓練所の必要なる旨の答申」に基づいて公布されたもので、内容は次のとおりである。
青年訓練所令
大正一五年四月二〇日
勅令七〇
第一条 青年訓練所ハ青年ノ心身ヲ鍛練シテ国民タルノ資質ヲ向上セシムルヲ以テ目的トス
第二条 青年訓練所ニ於テ訓練ヲ受クルコトヲ得ル者ハ概ネ十六歳ヨリ二十歳迄ノ男子トス
第三条 市町村、市町村学校組合及町村学校組合ハ青年訓練所ヲ設置スルコトヲ得
第四条 私人ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ青年訓練所ヲ設置スルコトヲ得
第五条 青年訓練所ノ訓練項目ハ修身及公民科、教練、普通学科、職業科トス
普通学科及職業科ノ科目ハ文部大臣之ヲ定ム
特別ノ事情アル者ニハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ訓練項目ノ一部ヲ課セサルコトヲ得
第六条 青年訓練所ニ主事及指導員ヲ置ク
第七条 青年訓練所ニ於テハ訓練ヲ受クル者ヨリ費用ヲ徴収スルコトヲ得ス
但シ地方長官ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第八条 青年訓練所ハ地方長官之ヲ監督ス
第九条 青年訓練所ノ設置廃止、訓練ノ課程其ノ他必要ナル事項ハ文部大臣之ヲ定ム
この訓練所令の公布された大正末期は、小学校を卒業しただけの勤労青年を対象とした実業補習学校が全国的に普及し、職業教育と公民教育を中心とした教育が着々と整備されていた。にもかかわらず、同年層の青年を対象とした青年訓練所を併立することになったのは、第1次世界大戦後の国の内外の事情、特に軍備縮小によって削除された兵力の補いをこの訓練所において訓練しておこうとしたのではないかと考えられる。
青年訓練所の設置者については、第3、4条に規定されているが、地方自治団体のほかに、私人も青年訓練所を設置することが認められている。私人とはたとえば工場や鉱山などをいう。
また、公立の場合は、実業補習学校又は小学校に併設するように指示されており、主事には小学校長が兼務し、指導員には小学校の教員や、在郷軍人、その他地方長官の適当と認めたものとなっている。
なお、青年訓練所において教練の課程を修了した者は、軍隊入隊後在営期間短縮の特典があたえられる。