「国民学校令」公布

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 「国民学校令」は、教育審議会の答申を受けて昭和16年(1941)3月1日「小学校令」を改正し公布された。
 国民学校という名称は、ドイツのフォルクス・シューレ(国民学校)からとったともいわれている。「国民学校令」を公布したときの訓令をみると、次のようなことが述べられている。
 
 (ア)日本の社会が大いに進み、とくに現在は今までにない時局となったので、「国家の総力を発揮」しなければならないときだから、教育の内容と制度を改めて、国家の根本を動かないものにしなければならない。
 (イ)日本(皇国)は、東亜と世界において重要な「歴史的使命」をもっている。そこに日本独特の教育制度を確立する必要がある。
 (ウ)そこで国民全体に対して日本(皇国)の運命を背負って立つような基礎的な練成をしなければならず、そのための教育制度を確立しなければならない。
 
 「国民学校令」第1条に「国民学校ハ皇国ノ道ニ則リテ初等普通教育ヲ施シ国民ノ基礎的錬成ヲ為スヲ以テ目的トス」とあるように、「皇国民の錬成(れんせい)」を目的としていた。
 国民学校は、初等科6カ年、高等科2カ年に分けられ、計8カ年の義務教育とされた。また、修身・国語・国史・地理を合わせた「国民科」が設けられ、体錬科に武道が加えられた。
 東京市内の国民学校では、次のような綱領をかかげていた。
 
 一 国民精神を涵(かん)養し市民的教養を高むること
   輦轂(レンコク)(天皇のおひざもと)の下に於(お)ける本市教育は常に国体の本義を闡明し、国民精神を作興し、国民的錬成の実を挙げ、他に策を示す覚悟がなければならぬ。特に時局の重大性に鑑み、挙国一致、尽忠報国の志操を涵養し、勤倹力行、堅忍持久以て時難を克服するの念を振起するとともに、深く本市の特殊性に稽(カンガ)へて、帝都市民としての自覚を促し、愛市心を養成し、市民的訓練に努め、其の教養を高めなければならない。
 二 体位の向上を図り質実剛健の気風を作興すること
   近年本市児童の身体状況は漸(ようや)く発達を示して来たれども、尚一層体位の向上を図り、強健な身体と旺盛な気魄とを養成して国力の進展に資せねばならぬ。特に保健衛生に留意し、体育運動を奨励し、克己節制、困苦欠乏に堪へ、質実剛健、明朗豁(かっ)達の気風を作興し、以て心身を鍛錬せねばならぬ。
 三 教科の本旨を徹底せしめ、教育の実際化に努めること
   各教科の要旨を体し、児童の心理と生活とに即して有効適切な指導方法を講じ、之が徹底を期せなければならぬ。特に国運の趨(すう)向を察して、各教科の取扱に留意し、児童の自発活動を促し、体験作業を奨(すす)め、科学的精神を啓培し、以て実践的創造的錬成に努め、併せて適正なる選職進学の指導をすべきである。
 (『東京市市政年報教育編』昭和16年度)