大正期に唱えられた新教育思想は、デモクラシーの思想に立ち、児童を中心にする「児童中心主義」ということができる。
昭和初期は、これら大正デモクラシーの教育思想を受け、児童の活動を重視した教育がみられる。港区地域(旧芝・麻布・赤坂区)の小学校の沿革誌や校報誌[注釈1]の中に次のような記事がみられる。
自然観察や栽培活動を重視した例(『さくらだ』昭和7年より)
自然の指導 自然の基礎的事実現象が知られていない。自然のあるが儘(まゝ)の姿に親しく接して、自然の事物や現象を対象として観察研究する機会が少ないからと信じます。
朝顔の栽培 児童は植物の一生を体験していることが極めて尠ない。まして花が咲き実になる迄の栽培の努力の如きは全く無体験と言ってよい。比較的栽培し易く且つ教育の効果の多い朝顔を選んで各自に栽培させました。
児童の作文 アサガホ 一ノ三 男
ボクハ マイアサ 六ジニオキテ センセイカライタダイタ アサガホノタネヲマイテ、マイアサ ミズヲヤリマシタラ、三ボンメガデマシタ。ボクハ アサハヤクオキテ ミルノガタノシミデス。ダンダンオホキクナッテ、マイアサ モモイロノハナガ タクサン サキマシタ。イマハ ミガタクサンデキマシタ。ボクハ ライネン ソノタネヲトッテオイテ マタコトシミタイニ マクノヲタノシミニシテヰマス。
関連資料:【文書】小学校教育 中之町小学校の児童の作文