また、各教科や学校の諸行事、生活の綴方による表現の指導を通して、国民精神や国家意識を一人一人の身につけていこうとする教育がさかんになった[注釈3]。麻布区では児童の作文をまとめて製本し各校に一部ずつ配布している。その綴方教育の実践のうちから一例を挙げてみる。
「紀元節」 飯倉尋常小学校 第二学年 男
この間しうしんで先生から紀元節のお話をいろいろとしていただきました。二月十一日は、昔神武天皇がわるものどもをごせいばつになってやまとのかしはらの宮ではじめて天皇のみくらゐにおつきになっためでたい日です。
ぼくは毎年紀元節には少年だんのけん国さいに行って神武天皇のお話や日本の国のできたことなどを聞いて、みんなで元気よくけん国だんごをたべます。
『氷川学報』第9号(昭和16年)には次のような記事がみられる。
海舟会展覧会 学芸会 ピアノ記念日唱歌会 教育記念日唱歌会 書方展覧会 夏休図画展覧会 運動会 校外教授 学校園 手工部の活動ほか
昭和15年ごろまでの教育は、皇国史観や軍事色の強まった教育ではあるがその活動分野は多岐にわたって充実した面もあった[注釈4]。