たとえば、歴史教科書で、元寇(げんこう)のときの大風を「神風」と呼び、修身の授業で、「国体」を強調するように教師用指導書で述べられている。更に、「サイタ サイタ サクラガ サイタ」で武士道の桜を、「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」で兵隊が教えられている。
国定5期(昭和16年)国民科修身では、「臣民の道」にもとる一切のモラルが排除され、修身に残った徳目や教材は、それ自身の価値や意義をまげられ、強引に皇国民の道に結びつけられた。たとえば、『初等科修身』2ノ14「雅澄の研究」、同18「くるめがすり」、同19「工夫する少年」、『初等科修身』3ノ12「間宮林蔵」などである。
そこでは、研究や学問がそれ自体の価値を離れて、「学問はその究極を国体に見出すとともに、また皇運扶翼ということを以てその任務とし……」(初等科修身・2期師用書14ページ)、研究や発明工夫は「すべてこれを皇運を扶翼し奉る臣民の道……」(同上147ページ)というように説かれていた。
教師は授業の展開において、このような教師用指導書を活用していたのである。
[図3] 教師用指導書