教育の留意点と要旨

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 国民学校の教育をどのように進めていくかについては、「国民学校令施行規則」(昭和16年3月14日、文部省令第4号)の第1条に10項目に亘り、留意点が挙げられている。特に、
 
 六 儀式、学校行事等ヲ重ンジ之ヲ教科ト併セ一体トシテ教育ノ実ヲ挙グルニ力(ツト)ムベシ
 七 家庭及社会トノ連絡ヲ緊密ニシ児童ノ教育ヲ全カラシムルニ力ムベシ
 八 教育ヲ国民ノ生活ニ即シ具体的実際的ナラシムベシ
 高等科ニ於テハ尚将来ノ職業生活ニ対シ適切ナル指導ヲ行フベシ
 
の項目を、各学校体制の中でどの様に対処したらよいかという点に関して各学校は、それを十分教育計画の中に繰み入れる努力をしていた。次の乃木国民学校(現檜町(ひのきちょう)小学校)の例があげられよう。
 
  生活指導の体制
 国民学校ノ教育体制ニ於テ教科指導等ノ基礎地盤デアリ教科指導等部面ノ補足的関係ニ立ツ
 イ 学習生活ノ基礎タル生活指導 生活必然性ヲ持チ生活行動ニ発展
 ロ 国民的情操陶冶(ヤ)トシテノ生活指導必ズシモ学習生活ヘノ発展ヲ期待セズ純粋ナル国民的生活ニ児童ヲ住マハセル
 ・国家的儀式ハ厳格荘重ニ行フ
 ・伝統的社会行事(節句お盆)ハ現代生活ニ生カス
 ・国家的社会行事(記念日、奉公日)ハ実践シテ国民ノ責ヲ果ス
 ハ 躾(シツケ)トシテノ生活指導[図5]
   日常生活ヲ実際ニ指導シテ道ニ導キ国民道徳ノ顕現トナルヤウ指導スル、修身科ノ指導ト一体トナル、礼法指導(公衆道徳ヲ含ム)
 ニ 勤労教育トシテノ生活指導 勤労創造ノ生活・献身奉公ノ実践力トナル
 ホ 家庭生活ノ指導

[図5] 躾トシテノ生活指導(乃木国民学校)

 前記のように、学校生活と家庭社会との連絡を緊密にした詳細な計画を立て、十分に国民学校の教科内容及びその留意点につき研修を深め、実際の教育に生かす努力をしていることがわかる。
 教科書については、16年度は1・2年児童は新しい教科書を使用、3年以上は旧教科書を使用する事になっていた。その後の計画は17年度は、3・4年児童、18年度には5・6年児童、19年度には高等科1年、20年度には高等科2年が新しい教科書にかわる予定であった。
 なお、教科指導と生活指導を有機的に関連させ、相互補完的に働かすことによって教育の実践性、具体性を保持し、国民錬成の実を挙げることができると考えて、全職員が一致して教育実践をすすめたのである。
 このように、国民学校の教育は「国民学校令」や「国民学校令施行規則」で、教育の方針や目的・内容が定められ「皇国民錬成(れんせい)」をめざして行われた。そして、背後には常に「教育勅語」があって、祝祭日には、校長がそれを奉読する慣例も生まれたり、また、朝礼のときの「皇居遙拝(ようはい)」も行われたりして、天皇崇拝の精神が養われた。
 
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