幼稚園の非常措置

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 戦局の緊迫とともに、学校や幼稚園で教育を継続することが困難になるに及んで、文部省は、通達を出して、学校に対する戦時非常措置を進めてきた[注釈5]。
 幼稚園に対するものとしては、昭和19年(1944)4月、東京都私立幼稚園協会は、東京都教育局の意向を取り入れて、私立幼稚園に、「決戦即応保育体制ノ件」を通知している。これは、国や都による通達ではないが、幼稚園の在り方に影響を与えることになった。
 
   決戦即応保育体制ノ件
  今ヤ国ヲ挙ゲテ決戦体制ニ就キ一般家庭ニ於テモ増産ニ町内勤労ニ所謂(イワユル)国民皆働ノ時幼稚園モコレニ即応シタル保育体制ヲ採ラザルベカラズ 先般理事会ヲ開催シ 東京都教育局ノ方々ノ意向モ参酌シテ 左ノ如ク決議ヲナス
  御加盟各園ニ於テモ出来得ル限リ、同一歩調ノ下ニ保育ノ切替ヘヲナシ以テ幼児教育ニ挺身サレンコト希望ス
 一 保育時間延長ノ件
 保育時間ハ一般ニ三時迄トシ両親共勤労ニ従事スル家庭其他必要ナル幼児ハ五時迄保育スルコト
 一 土曜日ノ半休廃止ノ件
 土曜日ノ半休ハ廃止シ 平常通リ保育スルコト
 一 日曜保育ノ件
 土地ノ事情及ビ必要ニ応ジ日曜日モ保育ヲナスコト
 一 保母ノ待遇ノ件
 時間延長其他ニ関連シテ保母ノ待遇ニ関シテハ充分ナル考慮ヲナスコト
 一 遠足ニ関スル件
 重要物資ノ輸送力確保ノタメ汽車、電車ヲ利用スル遠足ハコノ際見合ハセルコト
 (注意)
 ◇時間延長其他 単ナル時局便乗ヤ託児所化ヲ意味スルモノニアラズ 充分ナル幼児教育ヲ目標トシタル内容ヲモツコト
 ◇集団疎開ニ関シテハ当局ヨリ指示アルコトト思ハル
 ◇猶 保育ノ決戦下ノ体制ニツキテハ 東京都教育局ヨリ近日中ニ示達アル筈デアル
 
関連資料:【文書】幼児教育 公立幼稚園戦時非常措置