養護学級便り
昭和九年度は、第二学年の虚弱児童男一三名、女一一名、計二四名を以て一学級を編成した。同年末男八名、女五名、計一三名は成績可良となったので十年度において原級に復帰せしめ、残一一名は、猶(なお)特別養護を適当と認めて継続することにした。依って十年度は、新に進級した第二学年児童中虚弱者男八名、女八名計一六名と第三学年男五名、女六名計一一名の外に、別に第三学年より選んだ女三名を加へて総計三〇名を以て複式学級を編成した。
その後、昭和十一年二月の検査に依れば、第二学年男三名、女四名、計七名。第三学年男四名、女九名、計一三名は普通の状態に復したので原級に復せしむる見込である。
次は、養護の方法の概略である。
1、栄養食(実費徴収)日本栄養協会献立調理 2、肝油(無料) 3、牛乳(実費徴収) 4、日光浴 5、簡易なる体操 6、散歩遠足 7、深呼吸 8、歯磨 9、手洗、含嗽(うがい) 10、午睡 11、太陽燈照射(特別虚弱児) 12、検温 13、其の他
なお身体的、精神的に表われた成績及身体検査の結果を参考のためにあげておこう。
1 身体的方面の一般的徴候
イ、風邪を引くことが少なくなった。ロ、頭痛、腹痛等に罹(かか)り易(やす)い者が減少した。ハ、夜尿症の者がなおった。ニ、一般に睡眠状態がよくなった。ホ、食欲が増進した。ヘ、食物の好き嫌いが減少した。ト、一般に血色がよくなった。チ、運動が活発になった。リ、疲労が少なくなった。ヌ、凍傷等に罹り昜い者が減少した。
2 精神的方面
イ、衛生上の良習慣がついた。ロ、朝晩歯を磨くようになった。ハ、登校を喜ぶようになった。ニ、級友間の交誼が厚くなった。ホ、著しく元気になった。
このような1年間の様子を毎年校報に報告している。
人工太陽燈について
紫外線の医療的効果乃至太陽燈の価値については、今更申し上げるまでもなく、今日では病院は云う迄もなく虚弱児養護其他の目的を以て之が設備をなす小学校が増加しつつあることからでもうなづかれます。
さて本校では設備と同時に校医より照射を有効と診断された養護学級児童十名に対し、保護者の希望に依り、校医監督の下に衛生婦及衛生部員が協力して照射に当って居ます。
一週二回の照射で今日迄二十二回行った結果について、照射前後の心身変化を父兄に報告していただくと次のようであった。
元気になった 一〇
薄着になった 四
食物のすききらいがなほった 六
夜中に小便に起きなくなった 二
食欲が増した 八
感冒に罹(かか)ることが少くなった 九
扁桃腺が腫(は)れたり熱の出ることが少くなった 六
前の記事は氷川校における「人工太陽燈」照射の効果についての結果をまとめたものである[図1]。
[図1] 太陽燈照射・氷川養護学級
また、養護学級の設備も拡充されてきた。次にその一例をあげてみる。
学校設備大要 (『氷川学報』 昭和15年)
養護学級教室 三階
広さ 二五・一三坪 普通教室は一八・五〇坪
設備概要
教卓 一 椅子 一 児童机 三一 腰掛 三一 戸棚 一一
毛布 三〇 手洗場 一 麦稈(ワラ)帽子 掃除戸棚
含漱(ウガイ)薬入缶 一 塵箱 一 植木鉢 黒板 一 小黒板 二
鏡 一 食卓 三 食器入戸棚 一 食器 三一
毛布戸棚 一 本棚 一 掛図台 一 折畳椅子 三〇
寝椅(イ)子
関連資料:【学校教育関連施設】