大平洋戦争以前の旧3区内には、公立私立合わせて10の図書館があった。そのうち、昭和期に開館されたものをあげれば次のとおりである[注釈8]。
■私立藤山工業図書館
芝区白金台町1の56(現白金台1―18)
実業家藤山雷太の私財により財団法人として設立された工業専門図書館で昭和2年(1927)3月に開館した。昭和10年蔵書5万2978冊、同年閲覧者1万4171人、その内のほとんどは学生であった。現在跡地はマンションとなっている。
■私立日勝文庫
赤坂区一ツ木町63(現赤坂5―3)
円通寺住職中里日勝の蒐蔵(しゅうぞう)による仏典東洋哲学関係書を中心に、昭和4年5月に開館した。昭和15年蔵書1万3610冊、同年閲覧者約6500人
■赤坂区立桑田記念館附属図書館
赤坂区檜町(ひのきちょう)11(現赤坂9―3)
開館の経緯は『赤坂区史』によれば次のとおりである。
昭和十年四月、桑田権平氏より区に対して、桧町に於ける同氏所有の宅地並に建物の寄附があり、それと同時に同氏夫人勝子より児童図書館費として金一万円の寄附があったので、区は同婦人の寄附せられた趣旨に基き、桑田記念館内の洋室の一つを図書閲覧室に充て、児童用図書を購入して之に備へ、昭和十一年九月桑田記念館の開設と共に、同館附属児童図書館として開館した。
昭和15年、蔵書1450冊、同年閲覧者5500人。なお戦災により焼失、現在は区立桑田記念児童遊園となっている。