子どもの健全育成を目的とした活動は、子ども会だけでなく、本区における特徴的なものに母の会がある。
区内には昭和60年現在、愛宕、三田、高輪、赤坂、海岸一丁目の各母の会があるが、最も早い愛宕、高輪両母の会の設立は昭和24年5月のことである。
高輪母の会は当初「高輪少年母の会」として発足したが、その様子を同年5月10日付の『港区政ニュース』は次のように報じている。
子を守るために母は起つ
―高輪少年母の会発足―
戦時戦后の混迷期を通じての社会悪は、純真無垢であるべき少年を汚染し、その不良化は重大な社会問題として心ある者を憂慮させているが、高輪警察署管内の主婦や子を持つ母達は自らの手で、新生日本の明日への希望であるわが子やわが子の友をこの害毒より守るために起ち上った。同管内の婦人達はさき頃より少年の犯罪を予防しこれらの健全な育成を図るためには結局家庭の主婦や母の力によらなければ充分な目的を達成することができないことを痛感し高輪少年母の会の結成を準備中であったが高輪警察署の全面的な協力を得て去る五月二日午前九時高輪映画劇場において会員五百余名の参集のもとに発会式を挙行した。同会は管内各町毎に分会を置いて推進単位とし、会員の自主的な協力によって少年の犯罪予防と補導をはかり町内の少年達の明朗濶達な健全性を養成することを目的としているがその成果は各方面より多大の期待をかけられている。
母の会は青少年の不良化防止を目的として発足したが、やがて健全育成のための活動へと重点を移していった。例えば、愛宕母の会の活動の足跡をたどってみると、発足当初は街頭補導が中心であったが、やがて活動の中心は、昭和28年ごろから、紙芝居・幻燈会、映画会、巡回読書会、ラジオ体操会、水泳練習会、野球大会の実施へと移り、同30年ごろからは、さらに柔剣道練習会、キャンプ野営、親子バス見学会、クリスマス子ども会等が加わり、年間を通じた育成活動を展開するようになっていった。
これらの母の会は、昭和50年に「港区母の会連合会」を結成し、相互の連携を図りながら現在に至っている。