昭和20年代前半の事業の特徴の一つは、単発型の講演会や行事が多かったことである[注釈4]。昭和24年度の事業をみると、次のごとくである。
文化課文化係の事業として、東京都吹奏楽団演奏会(3月)、文化講座(年3回)、地方民謡研究会(9月)、社会教育法研究会(11月)、小中学校児童生徒芸能発表会、同作品展覧会(2月)、青少年団体指導者講習会(3月、2日間)、こどもの日制定記念音楽と映画の会(5月、2日間)、児童図書室(5月、7日間)、放出食糧調理講習会、子供芸能大会(9月、緑陰子供会の一環)、不良化防止児童学生作品展覧会(12月)、青少年補導映画会(11月)、映画会(4月~3月、区内小中学校、区施設等、月9回~16回)が行われ、その他に「巡回こども文庫と紙芝居の貸出」や「幻燈フィルムの貸出」が実施されていた。その様子を『港区政ニュース』でみると次のようであった。
巡回『こども文庫』と紙芝居の貸出
児童の文化施設として開設した巡回「こども文庫」と紙芝居は区内子供会その他の文化団体等に極めて好評なので区役所では内容の充実に一層努力しているが、この貸出方法は左の通りであります。
記
一 巡回「こども文庫」
五十冊を一班として貸出期間は十五日維持費として、一〇〇円を頂きます
(内容は小学校一年から新制中学一、二年程度)
なお、この文庫は港区役所に二班、麻布、赤坂両支所に一班、を準備してありますから希望者は区役所(支所文化係)にお申出下さい。
二 紙芝居
「鐘の鳴る丘」他十八部を期間五日とし維持費(一部につき)五円を頂きます
希望者は区役所文化係にお申出下さい
幻燈フィルムの無償貸与
区役所では区内各学校、青少年婦人団体に対し左記の幻燈フィルム(解説書付)を無償で貸与しております。希望の向は遠慮なく文化係へ御申出下さい
記
動物漫画 みんなで渡る一本橋 動物鉄道株式会社
時事解説 株式や社債を買うには
歴史 すまいの歴史
時事解説 私たちの町村生活 新日本建設の歩み
教育 教育の民主化 教育委員の選挙
その他
文化係という名称が示すごとく、いわゆる文化的行事が社会教育の主な事業であったということができよう。
社会教育法の施行(昭和24年6月10日)によって、社会教育事業の具体的な内容が示されたことにより、昭和25年以降、事業の整備がすすめられるところとなった。
ちなみに昭和25年度には、母親学級(7月、5日間、赤羽小学校)という継続的な学習会が試みられ、春の社会教育週間(4月、5カ所)も設定された。
昭和20年代は、社会教育事業のあり方を模索した時代ととらえることができるが、この時代を特徴づける主な事業をあげれば次のとおりである。