成人教育の振興

405 ~ 406 / 444ページ
 成人教育の用語の由来は、社会生活を担う大人の学習を指しており、青少年期の教育とは異なる内容や方法を持っているところから、その名が始まった。我が国においては当初「通俗教育」という名称が使われていたが、戦後、成人に対する社会教育の普及とともに、成人を対象とする社会教育の総称として定着したのである。
 民主主義思想の普及と定着をねらいとして、戦後の社会教育が再出発したことは、前項において述べたところであるが、昭和30年代に入ると啓蒙(けいもう)主義から脱却し、主体的な学習へと、社会教育の本来的なあり方を確立しようとする動きが活発になってきた。その要因として、まず第一に経済の復興をあげなければならない。科学技術の革新に伴い、新知識の獲得が人々の課題となり、また婦人の労働界への積極的な参入、経済的なゆとりに伴う余暇の活用等、急激な社会構造の変化がもたらす諸課題にどう対処するかが、いやおうなく、人々に学習をせまることとなったといえよう。
 また物的な豊かさを求めて、より生活を安定させるため、社会教育に対する期待も高まりつつあった。
 次に、都市に人口が集中し始めたことによって都市生活が大きく変貌したことがあげられる。人口の移動が激しくなり、生活様式の変化ともあいまって、近隣関係に対する人々の意識に変化を与え、地域連帯性の希薄化が始まっている。その修復が新たな課題となってきたのも、この時代であった。
 このような時代的背景の中で、本区の成人教育は、その基礎づくりに模索を続けたのである。