改訂の要点

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 宇宙開発などの科学技術の進歩が刺激となって、科学時代にふさわしい教育課程に向って全面改訂された昭和33年(1958)の学習指導要領は、その後の科学技術の進歩や経済の高度成長にともない、国民の生活や文化が著しく向上したことや国際社会における我が国の地位が高まったことなどにより改訂が求められ、新しい人づくりをめざす学習指導要領が昭和43年に告示された。
 昭和43年改訂の基本方針は次の4点である。
 
 (1) 望ましい人間形成の上から、調和と統一のある教育課程の編成を図る。
 (2) 指導内容を基本的事項に精選集約する。
 (3) 生徒の能力適性に応ずる教育の徹底を図る。
 (4) 授業時数の弾力的運用を図る。
 
 小学校の算数の内容に、「集合」「関数」「確率」などの概念を導入していることなど、今回の改訂の特色の一つとされている。科学時代に対応する指導内容の質的充実をめざしたものである。
 しかし、この改訂のあと昭和49年ごろから学習についていけない児童が目立ちはじめ、「落ちこぼれ」などの用語さえ生れた。つまり知識の伝達に偏り、児童の調和のとれた発達がおろそかになる傾向が現われ、教育内容の過密化や適時性が問題になってきた。昭和52年の学習指導要領改訂は、教育内容の質・量の両面から検討し新たな教育の転換を望む声にこたえて行われた。
 昭和52年改訂の基本方針は次の3点である。
 
 (1) 人間性豊かな児童生徒の育成を図る。
  自ら考え、正しく判断できる児童・生徒を育てる。
 (2) ゆとりあるしかも充実した学校生活を送れるようにする。
 (3) 国民として必要な基礎的、基本的内容を重視するとともに、児童・生徒の個性・能力に応じた教育が行われるようにする。
 
 昭和52年の改訂の特色は、学習内容の適時性や難易性をじゅうぶん吟味し、小中高校の一貫性を図ったことや、ゆとりあるしかも充実した学校生活を強調したことである。