■大学習室の試行

51 ~ 54 / 429ページ
 三光(さんこう)小学校の昭和50、51年度に行われた壁のない教室の研究は、児童の学習における自発性・主体性の不足の発見からはじまっている。そして学年合同授業が盛んに行われるようになり、児童が自主的学習を行うのにともない、広く多彩な構成ができる教室が必要になり大学習室が増築された。
 大学習室は3教室分の広さをもつ可動壁式つまり壁の開閉自在の教室である。この教室は児童の自主的学習に当たって、大集団(学年単位)中集団(学級規模)小集団(3~10人)、個別など、多様な学習組織を学習の目的や内容に応じて弾力的に編成することを可能にし活用がはかられている。大学習室の構想は児童中心・生活経験重視・学習主体・形式陶冶(とうや)尊重の教育思想に基づくもので学級の格差の是正、学力差に応じた指導内容や方法への対応、ならびに児童間の壁を取りのぞくためにも大きな期待がもたれた。
 三光小学校では、教室の壁をとりのぞく第一歩として、学級教室に閉じこもることなく、学校中の教室、体育館、校庭、廊下、屋上もすべて必要に応じて総合的に利用することからはじめている。[図11]は学習活動を多様化し活発にするために考えた施設の組合せ利用の一例である。

[図11]施設の組合せ利用の一例


[図12]合同授業〔第5学年国語科〈豊かな読書〉の指導〕

 [図12]は大学習室を活用した第5学年の国語の指導過程である。3人の学級担任で指導案を作成し全体計画をたてる。そして、読みとりの学習過程や方法を児童に考えさせたとき、三つの類型に分類できることと、さらに、文字理解力の低い子供に対する特別指導を考えて、四つの学習集団に編成した。
 この実践の結果から児童に自ら進んで、学び方をわからせるばかりでなく、教師の児童理解が深まり、指導力を高める利点が指摘されている[図13]。
 これ以後、各学校に教科指導だけでなく特別活動などにも広く活用できる多目的室が設置されるようになってきた。

[図13]大学習室における授業風景

関連資料:【くらしと教育編】第5章第1節 (3)高度経済成長期以降