指導の重点の変化

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 昭和45年度と同56年度の区内各校の「指導の重点」から、その変化をとらえてみたい。
 
■学習指導
 昭和45年度の芝浜・高陵・青山の各中学校の学習指導の重点をみると、積極的な学習意欲の育成、一人一人の生徒への対応、移行措置にともなう学習内容の検討があげられている。当時の新学習指導要領のねらいである「個人差に応じた学習指導」への試行が反映されていた。
 昭和57年度になると、能力に応じた指導、基礎・基本的学習内容を身につけさせる、自発的・主体的学習態度の育成、個性・能力に応じた効果的な学習指導など「ゆとりと充実」「選択学習」という新しい方向に学習指導の重点がむけられ、その指導体制が整えられていることを示すものとなっている。
 
■道徳教育
 昭和45年度の段階では、週1時間の指導時数を各校ともに位置づけながらも、指導の重点を明示していなかった。これは、学習指導要領に示されている指導内容の選択や単位時間などについて個々の学校の裁量にまかされていたためである。
 昭和57年度の港・港南・城南の各中学校の例をみると、躾(しつけ)の指導、人間の尊さ、自主的な判断、豊かな心情と学校をとりまく地域の特性を配慮した指導の重点を定め、その実践力を身につけさせると述べていた。とくに港中学校は、昭和56年に区教育委員会研究協力校として道徳の時間の研究発表を行い、注目を集めた。
 
■生活指導
 中学校における生活指導は、昭和40年に入ってとくに重視されてきた。各年度における指導の重点を読みとると、その時代の生徒の動向や生活の流れを反映していることがわかる。昭和45年度の朝日・城南・赤坂の各中学校の指導の重点をみると、集団生活の正しいあり方、基本的な生活習慣、望ましい生活のあり方、中学生としての自覚と誇りなどを身につけさせるとあり、家庭における躾教育や集団行動など問題が台頭しはじめた様子をとらえることができる。
 昭和57年度では、基本的生活習慣を養い、共同生活の向上につとめる、父母や地域社会との連携により問題行動の防止につとめる、教師と生徒との望ましい人間関係を築くなど、中学生の非行問題への取組みが指導の重点として浮きぼりにされてきた。
 
■進路指導
 昭和40年代、高等学校への進学率が急速に増加した時代であり、学校群制度など都立高校入学試験制度が改革され、社会の注目を集めたときでもあった。昭和45年度の御成門・高陵・青山の各中学校の例では、将来のことを考え計画を立てる、個性や能力、家庭や社会との関係を理解させる、進路への関心を高め将来への夢をもたせる、など学習指導要領で学級活動の中に位置づけられた進路指導への対応がみられる。
 昭和57年度では、人間の生き方を学ばせる、自分の特性を正しく見つめ、将来の生き方を考える、など「生涯教育」への道を配慮した自己教育力の育成へと重点を変えてきている。
 昭和40年代の「指導の重点」では、このほか人間尊重、生徒理解、日本人としての使命観、健康安全などをあげて、昭和50年代では地域社会との連帯、豊かな人間性の育成、国際理解などを主題として教育をすすめている。
 
関連資料:【学校教育関連施設】