■教育機器の活用[図8]

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 授業の中に教育機器が導入されたことは、昭和40年(1965)以降の大きな特色である。これは学習の個別化や充実のためで、区内中学校でもオーバーヘッド・プロジェクター(OHP)、テープレコーダー、テレビ、ビデオ、シンクロファックス、映画などがかなりはやくから授業に活用された。教育機器の中でも語学演習装置(ランゲージ・ラボラトリー、略称LL)は、区が昭和48年度から年次計画として導入が始まり、昭和56年度で区内全校に設置が完了した。LL装置の活用による授業の研究は各校で行われている。
 LL設備による学習の効率を高める指導法の研究は昭和46年、47年に区立城南中学校で行われた。

[図8]LL教室


[図8]LL教室

 英語の授業にテープやOHPを利用している例が多いが、これだけでは音声指導に限界がある。同校では生徒一人一人の能力、適性に応じ効率的指導法に転換するためこの研究を計画している。
 研究対象 第1学年
 テキスト
 研究内容 (1) 学習の流れと機器の関係
      (2) 機器の役割とチェックについて
      (3) 授業の各段階における問題点
 使用機器 LL装置、テープレコーダー、OHP、テレビ
 
 研究内容は3項目あるが、その中から(1)の学習の流れと機器の関係についてとりあげることとする。またLL装置およびその配置の状況や、LL授業の基本的流れは次のとおりである。
  LL授業の基本的流れ
 (1) 普通教室で指導した事項を次の時間、LLでドリルすることを生徒にはっきりさせておく。
 (2) LLにはアナライザーがついているので、前時の復習や前提条件となることがらについて復習やテストを5分程度実施する。
 (3) フローチャートによって機器の活用位置づけをする。
 (4) 特にテープによる練習中は個々の生徒をねらってモニター、必要に応じて記録する。
 (5) 学校放送はテキストに合わせ録画し使用する。
 授業は[図9]のようなフローチャートによって展開し研究をしている。

[図9]LL使用の授業例

 授業中は、OHPなどを使いフイードバックも視覚的に行っている。またアナライザーを使い「イエス」「ノウ」の判断により次のステップに進行するなど他の教育機器も併用している。
 実験の結果、LL授業では、OHP・TVなどの補助的活用により効果を高めること、授業の流れの中で必要な場面でテープの音声を適切に出せるように、指導者自身の技術を高めることと、準備を徹底することが必要であることをとらえている。また、教科書準拠以外のテープなどでは生徒が理解しにくい場合があるので、機会をみて発展的な学習をする必要があるとみとめられた。このほか教育機器を活用した授業研究には区立芝浜中学校の次の研究がある。
 区立芝浜中学校では理科を選び「反応分析装置を利用した学習指導法の改善」に関する研究を昭和47年度に行った[注釈5]。研究の概要は次のとおりである。
 
 単元  地球をとりまく宇宙
 小単元 太陽や星の動きが規則正しい周期をもっていることから、時間の概念を育てるとともに、日周運動の観察から、天球の概念を育てる。
 目標  天体の見かけの動きから、天体の相対的位置や運動を推論できるようにする。
     宇宙空間における、地球の位置や運動を理解する。
 
 指導計画 [図10]を参照
 本時の主題  太陽の動きと星座
 本時のねらい 星の一日の動きから、星座が球状であることを理解させ、天球の概念を育てる。
        日没時の星座のようすから、太陽の方角にある星座が毎日変化していることを理解させる。
 本時の目標  天球上における星の動きを、時刻と関連づけて説明できるようにする。
        同じ時刻に南中する星は、毎日ちがっていることがわかるようにする。
        太陽が天球上を毎日西から東に移動していることを理解できるようにする。
 
 この研究は[図10]の指導計画によって実施されているが、[図11]のフローチャートは教育機器を利用した展開例である。

[図10]「単元 地球をとりまく宇宙」指導計画・芝浜中学校


[図11]教育機器活用の理科の指導

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