情緒障害学級では、自閉症、自閉傾向の者を主として入級させてきた。自閉児については、学習の基本行動の定着、興味、関心の拡大、感覚・運動、認知能力、言語などの指導が行われた。行動療法が導入されているが学習した内容の日常生活への一般化を図っている。「情緒障害による問題行動をもつF児」について神明小学校事例研究から指導の実際をみてみよう。
入学当初の状況 ①レコードを自分でかけなければ情緒の安定が保てない。曲は手あたり次第。静かに聞かず、針をあちこち動かす。他のどんなものにも気分を転換できない。②集団行動に参加できない。③衝動的に友だちの顔を連続してぶつ。
指導の方針 ①情緒を安定させる方法を日常生活の中に取り入れる。②レコードは一定の条件のもとで許可する。③命令や拒絶的な言葉は使わないようにし、できるだけF児の要求を入れながらテクニックにより集団に参加させる。④F児の興味をもっている学習を契機として他の学習や行動面に自発性や意欲を高める。⑤家庭との連絡を密にする。
指導の経過 一学期―「一年生なのによくできる」「うまい」などほめる。どれがよく、どれが悪いか教える。むりやり参加させた後などやさしく話してやり気分をやわらげる。よい状態と悪い状態をサイコドラマ式の劇化で具体化する。理くつでやらせる。あらかじめ集合の時間を予告するなどした。こうして少しずつ集団に参加しはじめた。
二学期―レコードの代わりに牛乳のふたを拾ってくることを覚えた。ふたの数を二枚で満足させようと栓ぬきを遠くにおき、F児が取りに行っている間に他を処理し、自分でふたをあけて手に持たせる。文字や時計に非常に興味を持っていたので板目紙に時計を書いたり、要求に応じて文字を何百回でも書いてやり学習へ興味を転化するように図る。
三学期―牛乳のふたとレコードに固執しているが、授業の参加はさほど困難ではない。新しい問題として、言い出したことに強く固執する傾向が現われた。
関連資料:【文書】特別支援教育 港区情緒障害学級設置に関する報告