健常児との交流はどちらの学級の児童・生徒にとっても教育的に意義あるものである。
その例として、「開かれた学級づくり」をめざした筓(こうがい)小学校のたけのこ学級(肢体不自由学級)の昭和52年度の事例研究をみてみよう。
普通学級への授業参加例(児童「T男」の場合)
T男は軽度脳性マヒで、歩行が不確かで、身体の発達も知的発達も共に遅れている。特に言語の障害(構音異常)が目立っている。T男は、音楽、道徳週三時間の授業を普通学級の一年生と学んだ。
音楽の授業では、ハーモニカを、吸うことがうまくできない。他の児童の様子を見ながら吹いているだけであるが、歌唱などは周囲の児童に見習いながら授業に参加している。「たけのこ学級」での授業より幾分緊張している。また、仲間に遅れないように先生の指示や、周囲の友だちを見ながら追いかけていこうとしている。
普通学級児童は、T男に親切であり、またやさしくつき合おうと努めている。時にはT男も煩わしく感ずるような場面もあった。
運動会の練習も最初から一年の学級に参加した。困ったのはリズム種目であった。動きの不自由なT男は、どうしてもテンポに遅れる。学級で特別な練習も行ってみた。運動会当日T男は、少しぎこちなさを残しながらも立派にやることができた。とりわけ五〇メートル走では、かなり遅れながらも完走した。ひとり歩きをはじめて一年あまりのT男には、画期的なことであった。練習中のT男は授業での交流の場合と同様、大勢の中での行動に緊張し時には自分の場所がわからずとまどっていることもあった。
こうした交流は、T男にとって、時にはつらいことやとまどいもあったようである。このようなジグザグをたどりながら、最近では、一年での授業を普通に受けられるまでになった。
クリスマス子ども会への普通学級児童の参加
心身障害学級の合同行事「クリスマス子ども会」に本校の普通学級児童4年・3年の各1クラスがそれぞれ1時間ずつ参加し、各校からの参加児童におくるクリスマスカードを作成した。
当日の会は、参加した普通学級児童の好意的な全面協力と、参加した心身障害学級の児童の一緒に楽しもうとするまじめな姿勢によって会は無事に大きな成果をあげて終了した。
このような「開かれた学級づくり」への一歩として実施されたものであるが、交流を一層確かなものにするために、第一に児童の実態を正しく理解すること、第二に子ども達自身のつながりが作り出す、相互の信頼を大切にすることがきわめて大事なことである。