生活指導の重視

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 昭和43年度の「港区学校教育の重点目標」の第2項には、生活指導の徹底について、次の2点が明示されている。
 (1) 生活指導の計画を充実し、その実践に努める。
 (2) 豊かな情操とたくましさを養い、あわせて集団生活の正しいあり方を身につけさせる。
 また、昭和44年以降も「学校教育の重点」あるいは「学校教育のねらい」に生活指導の指針を明記し、区立学校での積極的な取り組みと充実・徹底を期してきた。ところが、昭和54年ころから小・中学生の非行が全国的に目立ちはじめ、暴走族少年による事件も増加の傾向を示した。更に、校内暴力をはじめ、盗みなどの刑法犯で補導された少年少女の数は、警察庁のまとめによると昭和55年以来連続して史上最高の記録を伸ばした。
 このような少年非行などの問題行動の対応に直面して、区教育委員会は昭和56年度「東京都港区学校教育の指導目標」において、生活指導、進路指導の重点事項を掲げ、その指導の充実・徹底を期した。
 更に、区教育委員会は同年度に新たに次の「生活指導協議会要領」を定め、これまでよりもいっそう学校間・地域及び関係諸機関との連携・協力を図り、児童・生徒の問題行動の防止と健全育成に力を注いだ[注釈6]。
 
  生活指導協議会要領
 1 目的
   区内小中学校における児童・生徒の発達課題や心情・能力・特性等について研究協議し、本区の生活指導の充実を図る。
   生活指導に関する情報交換及び関係機関との連携を密にし、児童・生徒の健全育成に努めるとともに、問題行動・非行の要因を把握し、その発生を一致して未然に防止する指導の徹底を図る。
 2 組織
  (1) 本協議会は、全小中学校長及び若干の小中学校教頭と、小中学校の生活指導主任で構成し、教育委員会が委嘱する。
  (2) 本協議会は、学校間連絡部会と中学校区別非行対策部会の二分野にわける。
  (3) 学校間連絡部会は、小学校班と中学校班にわけ、小学校班は、芝北部、芝中部、芝南部、麻布、赤坂の五ブロック、中学校は全校一ブロックとする。
  (4) 中学校学区別非行対策部会は中学校を中心とした十一部会とする。
    例 (名称……御成門学区非行対策部会)
      (参加校 御成門中・桜田小・桜小・鞆絵小・桜川小・神明小)
  (5) 協議委員長、副委員長は小・中学校長各一名で委員長、副委員長を輪番とする。委員長は、学校間連絡部会を召集することができる。
  (6) 学校間連絡部会の小学校班、中学校班の班長は小中学教頭各一名とする。それぞれのブロックには幹事一名をおき、その中から幹事長一名を互選する。
  (7) 中学校学区別非行対策部会の学区部長は中学校長とし、副部長は当該中学校学区内の小学校長とする。
  (8) 部長は部会を召集することができる。
 3 活動
  (1) 学校間連絡部会
    生活指導についての連絡、情報交換
    生活指導上の問題についての対策の協議
    委嘱事項についての調査
    生活指導上の課題についての研究・研修
    研究紀要の発行
    関係機関との連絡調整、情報交換、協議
    (学校と警察の連絡会、中高非行防止対策協議会等)
   開催回数は毎月一回、八月を除く年十一回とする。分科会は自主的に適宜行うことができる。
 (2) 中学校学区別非行対策部会
   PTA、町会長、補導連絡会、警察、青少年委員等、関係機関の代表と情報交換を行い、問題点の確認及び対策を協議し、学校と地域の一体化を図る。
   地区巡回、情報収集活動等
   開催回数は年二回、七月及び一月とする。但し必要に応じ臨時会を開催することができる。
 
 また、児童・生徒の非行などの問題行動を防止して健全育成を期するためには、計画的・組織的に進路指導を行いその充実を図る必要があり、区教育委員会は昭和58年度に次の「進路指導協議会要領」を定めた。
 
  進路指導協議会要領
 I 目的
   児童・生徒一人ひとりの能力・適性等について的確な把握に努め、進路指導に関する小・中学校相互の情報交換と発達段階に即応した計画的・組織的な指導の確立を図る。
 Ⅱ 組織
  1 本協議会は、委員長、副委員長(小・中学校長各一名)、小・中学校における進路指導関係教諭をもって構成する。
  2 小学校を芝北部・芝中部・芝南部・麻布・赤坂の五ブロック、中学校の全校を一ブロックとし、各ブロックから一名の幹事を選出する。
 Ⅲ 活動
  1 進路指導について情報交換
  2 進路指導上の諸問題とその対策についての協議
 
 区教育委員会は、昭和56年3月、児童・生徒の健全育成を願い、父母向けの指導の手引書『子どもとのこころの対話』を編集し、区立学校在籍児童生徒の全家庭に配布した。
 また、生活指導協議会では、教師用指導資料『日常の生活指導のポイント』を昭和58年3月に発行し、区立学校の全教師に配付した[図7]。
 昭和58年ごろから校内暴力、恐喝(きょうかつ)などの児童・生徒の問題行動は沈静化したが、その後は「登校拒否」や「いじめ」の問題が社会的に大きな話題となった。これらの問題行動を早期に発見し解決するためには教師は児童・生徒の一人一人について理解を深め、児童・生徒と教師の好ましい人間関係の上に立って適切な指導を行うことが大切である。そのため区教育委員会は昭和58年度から教育センター事業の一環として、教育相談講習会ならびにカウンセリングセミナーの教育相談研修会を開催し[注釈7]、学校カウンセリングの技術を身につけた教師の養成に努めてきた。

[図7]生活指導資料

関連資料:【文書】中学校教育 中学校学区別生活指導協議会