これらの資料を死蔵させることなく、区民の利用に供するため、館外貸出しは行っていないものの、閲覧室を設けて、閲覧サービスを行うとともに、一部の資料を除いて、複写することも認めている。また、前項に述べた「港区資料シリーズ」は、これらの資料をもとに刊行されたものである。
資料室の利用状況は、『港区の教育』(57年版)によると次のとおりである。
まず、新聞、雑誌、放送などジャーナリズム関係からの調査、照会、或いは銀行、会社、官公署、学校などの社史、記念誌など作成のための地域の歴史や人物についての資料要望が目につく。最近では、社内報やPR用のパンフレット、ちらし類の作成にも、地域に対する関心度の高まりに呼応してか、江戸期と現在の地図の対照とか、街並の新旧対照写真、或いは関連する文化財を取り入れたり、文学散歩、歴史散歩的な企画が目立ち、それらの資料の閲覧希望が増えている。
こうした法人・団体のほか、歴史研究者、郷土史家、伝記作家の研究・調査から学生のレポート、小中学生の宿題にいたるまで利用者は多様であり、都内はもちろん近郊在住者のみならず、東北、九州など遠隔地からの照会も珍しくない。変わったところでは、先祖のこと、家系の手がかりが欲しいとか、所有地に関して地質、地盤がどうなっているか、境界や道路についての昔の記録がないか、などといった質問まである。
ともすると古い資料の照会が中心と思われがちであるが、ここ数年、町域の変遷、町名の由来、寺社の転移、史跡など歴史的なものに加えて、現在の人口、住宅、商工業についての統計資料や社会教育、福祉、公害、環境、地域開発など行政全般にわたる各種資料の閲覧希望が増えていることが注目される。「情報公開」の波は、図書館の地味なレファレンスサービスのなかにもはっきりと感じられてきている。
なお、収集・保存されている資料の変化をあげれば[図45]のとおりである。
[図45]所蔵資料の状況
関連資料:【図表および統計資料】生涯学習 港区資料室