コラム 国際理解教育の先進地

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 平成の時代は、日本がグローバル化を本格的に推進した時代であり、港区は、その点において先導的な役割を果たしてきた自治体である。港区には、日本にある大使館約150のうち、過半数が存在しているなど、そもそも国際色の豊かな自治体であった。加えて平成期には、日本に新たに進出した数多くの外資系企業が区内に本社を置くこととなったことなどにより、外国人登録者が増加していった。令和2年(2020)現在、総人口26万人のうち、1割弱に当たる約2万人が外国人登録されている住民となっている。
 そのような状況において、区内の幼稚園、小・中学校には、多くの外国籍の幼児・児童・生徒が在籍し、さらに海外から帰国してきた幼児・児童・生徒の在籍者数も多く、国際理解教育の実施が必須となった。
 国際理解教育の本格的な開始は平成15年度(2003年度)からであり、同年度、港区教育委員会は基本方針の一つとして「国際社会に対応する教育の推進」を掲げた。教育委員会は、平成18年度より、教育特区を活用して、「国際科」(小学校)・「英語科国際」(中学校)という独自教科を設置した他、平成24年度より東町小学校に「国際学級」を開設するなど、数々の独自施策を展開してきた[図1][図2]。
 以下では、紙幅の関係で国際学級の取り組みに焦点を当てて詳しく紹介してみよう。
 国際学級の設置目的は、外国人児童に、英語による日本の教育を提供することで、教育の機会の多様化を図るだけでなく、日本人児童に、積極的に英語でコミュニケーションを図る機会を充実させること、さらには日本人、外国人の児童が互いに多様な文化や価値観に触れることによって、国際理解教育を推進することにある。国際学級では、各学年10人程度の外国人児童を受け入れ、担任と国際学級講師による2人体制で学級運営を行い、国語・算数など主要教科では別室で英語を用いての少人数指導を受け、音楽・図工・体育・校外学習など学級単位で行ったほうがよい場合にはクラスに合流し、日本人児童との日常的交流の機会を増やしている。開設時には、雑誌『総合教育技術』(平成24年6月号)において、「異なる背景を持つ人々と〝ともに生きる〟スキルを身につける『国際学級』の取り組み」として巻頭カラーで特集されるなど、教育界でも注目を浴びた。
 初年度7人の所属で始まった東町小学校の国際学級は、その後順調に発展し、平成29年度には50人にまで増え、さらに同年、南山小学校にも新たな国際学級が開設されている。

(小国喜弘・東京大学大学院教授)



[図1] 東町小学校の取り組み
ESC(English Support Course)の授業(左)と国際科の授業(右)。


 


[図2] 六本木中学校の取り組み
英語科国際、スタンダード・コース(上)とネイティブ・コース(下)。

関連資料:【くらしと教育編】第14章第4節 (5)国際科、国際学級の設置