冒頭で述べたように、平成期の教育は、「生涯学習」という視点から制度化がなされることになった。「生涯学習」という言葉が正式に文部省において使用された最初の事例は、昭和59年(1984)から62年にかけて4次にわたる答申を出した臨時教育審議会においてであった。平成3年(1991)の中央教育審議会の答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」では、今後の生涯学習社会の実現に向けて学校に期待される役割や具体的施策を示すとともに、生涯学習の成果を適切に評価する仕組みの拡充について提言し、生涯学習社会移行の道筋が示されることとなる。
また、昭和63年には、文部省の社会教育局が生涯学習局へと機構改正され、文部省内での筆頭部局として位置づけられ、さらに平成13年の省庁再編によって文部省が文部科学省へと再編されるに際しては、生涯学習局が生涯学習政策局に改組され、総じて、公教育の仕組み自体が生涯学習体系として整備されていくこととなった。
これら国の政策体系の焦点が変更されるに伴って、港区において、平成期においていかに幅広い生涯学習施策が新たに展開されることになったのかという視点から、第8節の記述をご覧いただきたい。
以上のように、平成期の30年間の中で、港区の教育は一層の充実が図られることになった。港区民は、その中で、どのような人生を送ることになったのかに思いを馳せてお読みいただければと思う。