施策の検討

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■適正配置計画
 平成期は、区立幼稚園に就園する幼児数の増減が大きな課題であった。港区は、幼児人口の推移や幼稚園の受け入れ人数の過不足状況、さらに、住宅からの通園範囲、地域特性、適正規模などを考慮しながら、幼稚園への就園希望幼児の受け入れに対応してきた。
 平成8年(1996)までは、少子化により区立幼稚園に就園する幼児が大きく減少していた。そのため、幼稚園の小規模化が起こり、竹芝幼稚園、桜田幼稚園、鞆絵(ともえ)幼稚園、赤坂幼稚園、氷川幼稚園、西桜(さいおう)幼稚園の6園が廃止された。
 区立幼稚園の教育環境の整備については、平成7年に「『区立学校適正規模等の答申について』の今後の取り組みの指針」を決定し、平成9年に「港区幼稚園問題内部検討会報告書」をまとめた。そして、同年、港区幼稚園問題検討委員会を設置し、区立幼稚園の適正規模・適正配置について諮問していくこととした。
 平成10年10月の「区立幼稚園配置計画の基本方針」では、1学級の定員は20人で複数学級の設置が望ましいこと、将来的に6園程度の区立幼稚園を確保する必要があることを示した。そして、教育環境の確保や幼稚園の運営面から、「当面配置する区立幼稚園」と、応募のあった園児数によって学級編制や次年度の募集を変更する特例を設けて園児を募集する「園児募集の特例の対象となる区立幼稚園」とを区分して配置する方針とした。平成11年度は、当面配置する幼稚園に加えて、[図2]に掲載した7園も募集する。ただし、7園については前ページの①、②のような特例を設けるとした。今後の諸課題として、区立幼稚園と私立幼稚園の共存共栄を基本に協議していくことも確認された。

[図2] 平成10年度 幼稚園の適正配置計画表
出典:『港区の教育』平成10年度版

①平成11年度の4歳児の人数が6人以上の場合
 ア 4歳児の学級を編制します。
 イ 平成12年度も募集します。
   この場合、平成12年度の4歳児の人数が10人以上の場合は、当面配置する幼稚園とします。
   平成12年度の4歳児の人数が9人以下の場合は、学級を編制しません。
   なお、4歳児の学級を編制しないときは、平成12年度の5歳児は、当面配置する幼稚園への転園または卒園までの在籍のいずれかを選択できるものとします。
②平成11年度の4歳児の人数が5人以下の場合
 ア 原則として、4歳児と5歳児を合わせた1学級の編制とします。
 イ 平成12年度は募集を停止します。
   なお、平成12年度の5歳児は、当面配置する幼稚園への転園または卒園までの在籍のいずれかを選択できるものとします。
「区立幼稚園配置計画の基本方針 3 当面の配置計画(2)園児募集」(平成10年10月8日)より
 
 平成13年、同17年は、人口の動向や就園希望幼児数の調査・分析結果をもとに区立幼稚園における適正配置計画が出され、段階的な定員数の見直しと調整を行った。平成13年の「区立幼稚園配置計画の見直しについて」 では、基本方針に基づき、適正規模の確保を目指しながら[図3]のように配置した。

[図3] 「基本方針」に基づき当面配置する区立幼稚園
出典:『港区の教育』平成13年度版

 平成17年9月の「区立幼稚園配置計画の取り組みについて」では、年少人口の増大を受けて、1学級の定員が20人の場合、4・5歳児の学級が複数ある区立幼稚園12園が必要と見込まれた。また、3年保育および預かり保育ができる区立幼稚園を、支所ごとに少なくとも各1園は設置できるよう、私立幼稚園と協議を進めながら取り組むこととした。
 続いて、平成26年2月の「港区幼稚園教育振興方針」では、4・5歳児の学級を30人定員にする方針が示され、幼児人口の増加への対応を行った。
 
■幼稚園教育に関する方針の検討
 ●港区公私立幼稚園調整審議会・港区幼稚園問題検討委員会
 昭和48年(1973)、「港区公私立幼稚園調整審議会」が設置された。区内の幼稚園教育に重要な役割を果たしてきた私立幼稚園の経営を圧迫することなく、区立幼稚園に対する理解と協力を得るためである。同審議会は、平成11年(1999)までの間に第8次まで開かれ、区立幼稚園の開設、適正配置、3歳児保育の実施、私立幼稚園の保護者負担軽減や補助金などについて審議が重ねられた。
 平成9年には、学識経験者や公私立幼稚園関係者らで構成する「港区幼稚園問題検討委員会」が設置され、区立幼稚園の適正配置や区立幼稚園の3年保育のほか、幼稚園教育振興策、区立幼稚園が当面行うべき具体策について検討が行われた。
 平成10年、「港区の幼稚園問題について」の答申および報告で、少子化・核家族化により従来の子育てを行うことは困難であり、住民から区立幼稚園での3年保育実現への要望があること、定員枠や利用料などの私立幼稚園と区立幼稚園との較差是正への取り組みを行うこと、最も重要なのは教員の資質向上であることなどの共通認識が示された。
 ●港区幼児教育振興アクションプログラム
 「港区幼児教育振興アクションプログラム」(以下、アクションプログラム)は、幼稚園教育のさらなる充実を目指すとともに、港区全体の幼児期の教育をリードする総合的な行動計画である。平成21年(2009)4月から3年(平成24年からは6年)を計画期間として策定され、検討委員会を設置した上で3年ごとに成果と課題を検討しながら、見直しが図られている。アクションプログラムの進捗状況については、幼稚園の諸課題を検討するため平成21年に設置された公私立幼稚園連絡協議会でも確認している。
 平成21年度から23年度のアクションプログラムは、公私立幼稚園の相互協力と連携のための環境整備を含め、幼稚園教育全般に関する項目を総合的な観点から検討して策定された。園児・保護者・公私立幼稚園の三つの視点から、①幼児教育環境の充実、②私立幼稚園保護者への支援、③公私立幼稚園教育の充実、以上を基本的考え方として、施策の実施や連携を進めた。
 平成24年度から26年度のアクションプログラムは、幼児人口の変化への対応、児童虐待の防止、東日本大震災を受けた防災対策などが課題となった。家庭・幼稚園・地域のそれぞれの視点に立って、①港区における幼児教育の充実、②教員の資質および専門性の向上、③幼稚園における子育て支援、④幼児教育を支える基盤等の充実、⑤安全安心対策の推進、⑥幼児教育の充実に向けた公私立幼稚園間の連携の推進、以上六つの項目について重点的に取り組むこととされた。
 平成27年3月には、同年4月から6年間を計画期間とするアクションプログラムが策定された。幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続が課題となり、①小学校入学前教育の充実、②幼稚園就園を希望する幼児を受け入れるための環境整備の推進、③公私立幼稚園較差の是正に向けた取り組み、④安全安心対策の推進、⑤子育ての支援の充実、⑥国際化に対応した取り組み、の六つが基本方針とされた。
 平成30年に前期3年の成果と課題の確認を行い、平成29年の幼稚園教育要領の改訂を踏まえ、後期も施策をさらに進めることとした。
 ●港区幼稚園教育振興検討会
 平成24年(2012)8月に、子ども・子育て支援法などの子ども・子育て関連3法が成立し、平成25年6月には「教育振興基本計画」が閣議決定された。質の高い教育・保育を総合的に提供するためのさらなる条件整備が求められたことを受け、区では平成25年4月に「港区幼稚園教育振興検討会」が設置された。同検討会では、公私立幼稚園全体での幼稚園教育振興の方向性を中長期的な視点から検討した。平成26年2月には「港区幼稚園教育振興方針」が策定され、3年保育の新規開始および増員を行うこと、4・5歳児の学級を30人定員とすること、私立幼稚園の受け入れを増やすことなどの方針が示された。
 
関連資料:【文書】教育行政 港区幼稚園教育振興方針
関連資料:【文書】教育行政 『区立学校適正規模等の答申について』の今後の取り組みの指針(平成7)
関連資料:【文書】教育行政 区立幼稚園配置計画の基本方針(平成10)
関連資料:【文書】教育行政 区立幼稚園配置計画の見直しについて(平成13)
関連資料:【文書】教育行政 区立幼稚園配置計画の取り組みについて(平成17)
関連資料:【文書】教育行政 平成期の学校施設整備計画(平成7)
関連資料:【文書】教育行政 港区幼児教育振興アクションプログラム[平成21年3月刊]
関連資料:【文書】教育行政 港区幼児教育振興アクションプログラム[平成24年3月刊]
関連資料:【文書】幼児教育 東京都港区公私立幼稚園調整審議会条例
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 区立幼稚園・小学校・中学校の適正配置の取組
関連資料:【図表および統計資料】学校教育 幼稚園の定員と幼児数
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 私立幼稚園連合会補助金額