港区研究パイロット園・研究奨励園の研究

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■平成前期(平成元~10年ごろ)
 港区教育委員会の研究パイロット園・研究奨励園では、幼児の主体的な遊びが学びにつながることや、環境を通した教育について、[図11]のような研究が行われた。

[図11] 研究奨励園等による平成前期の研究
出典:『港区の教育』各年度版より作成

■平成中期(平成10年ごろ~20年ごろ)
 研究パイロット園・奨励園では、[図12]のような主題で研究が行われた。

[図12] 研究奨励園等による平成中期の研究
出典:『港区の教育』各年度版より作成

 
 ●中之町幼稚園の研究
 中之町幼稚園は、平成11・12年度の区研究奨励園として、「遊びは学び―好奇心を広げ探究心を深める環境構成の工夫―」という主題で研究発表を行った。「幼児の遊びは学びである」ことを意識して、幼児が遊びの中で幼児期に必要な経験を積み重ねていけるような環境づくりが探究された。
 幼児は、生活の中で深く刻み込まれるような印象的な出来事があると、それが心の中に蓄積され、遊びの中で表現される。さらに「次はこうしてみよう」と気づくことで、遊びが深まり発展していく。この発展の支えになるのが、幼児の強い心の動きであるとした。教員が幼児の意欲を捉え、イメージが広がるような声かけをすることや、十分に満足できるまで表現できる機会を保障することが、好奇心を広げる重要な環境であるとした。
 
 ●にじのはし幼稚園の研究
 外国籍の幼児や特別な支援を要する幼児の増加により、人権教育についての一層の理解が求められるようになった。にじのはし幼稚園は、平成17・18年度東京都人権尊重教育推進校として指定を受け、幼児期に人権尊重の精神を育むための考え方を探った。研究主題は「人とかかわり育つ子ども―気付き、考え、行動する幼児が育つための教師の援助を探る―」である。
 幼児期の人権教育においては、教員との信頼関係をもとに、友達を受け入れられる心の余裕を持たせることが重要である。そのためには、幼児が主体的に遊び、遊びへの満足感を味わうことが求められる。また、自分で考え、行動することの大切さを、遊びを通して教える援助のあり方を発達段階ごとに明確にした。
 
■平成後期(平成20年ごろ~31年まで)
 研究パイロット園・奨励園では、小学校教育への円滑な接続の観点から、[図13]のような研究が行われた。

[図13] 研究奨励園等による平成後期の研究
出典:『港区の教育』各年度版より作成

 
 ●青南幼稚園の研究
 平成20年(2008)の幼稚園教育要領改訂では、5領域のねらいのうち、「人間関係」について改訂が見られ、「進んで身近な人とかかわり」が「身近な人と親しみ、かかわりを深め」と変わった。これを「人とのかかわりの質が問われている」と捉え、青南幼稚園は平成19・20年度の研究パイロット園として「幼稚園教育における協同性の育ちの充実に向けて」という主題で研究発表を行った。
 幼稚園教育での協同性の育ちにおいて重要なことは、自分に自信が持てるということである。自己有用感が高められるには、4歳児のときからの何でもやりたいという意欲、嫌だという意思表示、規範意識の芽生えなど、さまざまな学びの積み重ねが重要であるとした。友達と協同し、互いのよさを認め合う姿は5歳後半から見られ、小学校生活への基礎となっていくことを明らかにした。
 
 ●白金台幼稚園の研究
 白金台幼稚園は、平成21年度(2009年度)に研究パイロット園の指定を受け、「しなやかでたくましい幼児の育成―保護者・地域とのパートナーシップづくりを目指して―」を研究主題にした研究発表を行った。
 幼児を育てるには、園内だけではなく地域や保護者とのつながりを深め、共に育む必要がある。幼児がいろいろな人と関わり、多様な経験をしていくことが、目指すべき「しなやかでたくましい幼児」の実現につながるとした。研究では、地域・保護者とパートナーシップを築く方策を明らかにするとともに、①日常の情報交換・情報共有、②園からの情報発信、③保育参観・参加、④保護者・地域の方の教育力の活用、に分けて、共に育む関係づくりを捉えた。
 その他、白金台幼稚園では、都会の中の「森の幼稚園」として、「森の子 風の子 大地の子が育つ幼稚園」を目指してきた。自然豊かな環境を生かした、その季節に適した経験、互いに関わり合い文化を創り出したり継承したりする経験、幼児も保護者も共に育つ経験などを大切にして、教育課程や指導計画を作成している。また、平成30年度・令和元年度には、区研究奨励園として「主体的に環境に関わり豊かな遊びをつくる―森を街に変える子どもと先生のチャレンジ」という主題で、幼児の主体性の育成と園庭環境の活動を主軸とする研究を行っている。
 
 ●芝浦幼稚園の研究
 近年、幼児の体力測定の結果から体づくりの必要性が認識されるようになった。芝浦幼稚園は平成26・27年度の研究奨励園として、「徳・知・体」のバランスの取れた生きる力の育成のため、「夢中になって遊ぶ~運動の楽しさを味わえる幼児の育成~」を主題として、体を動かすことの重要性を検証した。
 芝浦幼稚園では、1日45分の運動を確保した「パワーアップタイム」を設定し、「投げる」「ぶら下がる」「リズミカルに動く」などの動きを取り入れた六つの運動遊びを行う。これらは、幼児に任せておくだけでは培われにくい技能といわれる。この運動に3~5歳の異年齢児が交じって取り組むことによって、人間関係を深め、たくましい心と体の育成を目指した。

[図14] 研究奨励園パンフレット
出典:『港区教育委員会研究奨励園研究紀要』平成26・27年度

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