■港区の乳幼児の教育施策とその意味
平成期は、急激な少子化を受けた「子育て支援」が展開された。平成元年(1989)には、「ひのえうま」の昭和41年(1966)の合計特殊出生率を下回る「1・57ショック」という象徴的な出来事があり、少子化対策が急務とされた。そして、平成6年、国は「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラン)」を策定した。これ以降、延長保育や一時保育などの多様な保育サービスの充実が図られるとともに、地域の子育て支援センターなどが整備されるようになった。
かつて、港区では人口減少・乳幼児数減少に対応するために、平成10年策定の「区立幼稚園配置計画の基本方針」に基づいて区立幼稚園数の削減に踏み切った経緯がある。25園あった幼稚園は、地域の支所と関連させて12園に削減された〔第1節第1項(1)32ページを参照〕。
その後、幼児人口の増加が見られるようになり、平成17年に「区立幼稚園配置計画の取り組みについて」を策定し、区立幼稚園の適正配置の見直しを行ってきた。さらに「港区幼児教育振興アクションプログラム」を策定し、公私立幼稚園全体での取り組みを進めた。
一方、国においても、平成24年8月に「子ども・子育て関連3法」が制定され、同27年4月から「子ども・子育て支援新制度」が施行されることになり、子ども・子育て支援対策の充実を図ることとされた。また、平成25年6月策定の「教育振興基本計画」で幼児教育の質的向上、無償化に向けた取り組みなどが課題として挙げられた。
このような状況を踏まえ、区では、平成25年4月に「港区幼稚園教育振興検討会」を設置し、公私立幼稚園全体での幼稚園教育振興の方向性を検討している。さらに、幼児期の教育・保育・子育て支援ニーズを把握し、幼稚園・保育園および地域の子ども・子育て支援事業などを計画的に行うことを目的に「港区子ども・子育て支援事業計画」が平成27年に策定された。子どもを取り巻く環境変化やライフスタイルの多様化などと相まって、小学校入学前の教育や保育ニーズも多様化している。それらも捉えながら質の高い幼児教育を実現するために、次に挙げる施策が行われている。
■具体的施策
「港区子ども・子育て支援事業計画」(平成27~31年度)で示された子育て支援の主な内容は、おおよそ次の3点に要約される。
① 幼稚園・保育所・認定こども園を通じた共通の給付体制(※1)が創設され、質の高い教育・保育を総合的に提供する。
② 保育所などの施設整備のほか、「家庭的保育」や「小規模保育」など、さまざまな手法による保育により待機児童解消を図る。また、保育の量だけでなく質の確保も図る。
③ 「放課後児童クラブ(学童クラブ事業)」や「地域子育て支援拠点事業(子育てひろば事業)」など、さまざまな子育て支援施策を充実する。
また、同計画では「安心して子育てができ、未来を担うすべての子どもたちが健やかに成長できる地域社会」を目指す将来像として掲げており、次の九つの基本方針を定めた。
① 教育・保育施設等の充実
② 地域子ども・子育て支援事業の充実
③ 教育・保育の一体的提供及び推進体制の確保
④ 子ども・子育て支援の質の確保
⑤ 産後休業及び育児休業後における円滑な事業利用の確保
⑥ 特別な支援が必要な家庭や子どもの施策の充実
⑦ ワーク・ライフ・バランス実現のための環境整備
⑧ 放課後対策の総合的な推進
⑨ 子どもの健全な育成に向けた施策の推進
関連資料:【文書】教育行政 区立幼稚園配置計画の取り組みについて(平成17)
関連資料:【文書】幼児教育 港区子ども・子育て支援事業計画(平成27)