区では、子育ての相談を「子ども家庭支援センター」「子育てコーディネーター事業」「教育センター」などで受けつけ、年々充実させている。「子ども家庭支援部事業概要」(平成28年度版)の相談内容別件数によると、平成25年度(2013年度)の「子育て相談」の件数は617件に上り、相談内容は「育成相談」が最も多く、次いで「児童虐待相談」が多くなっている。同様に「港区の子ども・家庭支援」(平成30年度版)を見ると、子育て相談の件数は1088件に上っていることがわかる。
[図23] 港区の子育て支援施設
出典:港区子育てハンドブック『みんなとKIDS~あんしん子育て』平成30年より作成
*港区子育てハンドブック『みんなとKIDS~あんしん子育て』内の「おでかけMap」をもとに、公園と私設ミュージアムを除いた区の施設のみ記載
■ひとり親家庭支援
区では、ひとり親家庭を支援するために、小学生以下の子どものいるひとり親家庭にホームヘルパーを派遣する「ひとり親家庭ホームヘルプサービス」、母子の自立にとって共同生活が必要な場合に入所できる「母子生活支援施設」、「港区コミュニティバス乗車券」の交付、区の指定日帰り施設を低額で利用できる「親子ふれあい助成事業(旧・ひとり親家庭休養ホーム)」などの制度がある。平成22年(2010)8月1日から、児童扶養手当法の一部改正に伴って父子家庭にも支給が拡大されたため、ひとり親(父子)家庭支援助成の制度は、同年7月31日付で廃止された。
■一時預かり
家庭において保育を受けることが一時的に困難になった乳幼児について、必要な保育を行うのが一時預かりである。保育園や子育てひろば「あっぴぃ」で実施している。「あっぴぃ」は、平成26年度(2014年度)から子育てを楽しむスペースとして新しく始まった施設である。一時預かりを行う「あっぴぃ」はその後も増え、平成31年4月時点で7施設に上る。
■遊び場の提供
乳幼児が他の乳幼児と一緒に遊んだり、社会的に開かれた場所で遊んだりできる機会や施設も求められている。遊びの内容についても、自然体験ができるもの、親子でできるもの、専門の係員に教えてもらえるものなど、さまざまなニーズがある。このような要望に対応するため、区では「室内あそび場」と「屋外あそび場」の提供を行っている。
●室内あそび場
親子が気軽にゆったりと過ごすことができる場所として用意されているのが、「子育てひろば あっぴぃ」「子育てひろば『あい・ぽーと』」「みなと子育て応援プラザPokke」「子ども家庭支援センター」などである。子育てに関する情報交換ができ、各種イベントも開かれている。
また、遊戯室、工作室、図書館などの設備がある「児童館」「子ども中高生プラザ」「児童高齢者交流プラザ」などでは、乳幼児から高校生までが集まって遊ぶことができる。
●屋外あそび場
屋外あそび場は、子どもが活発に遊ぶ場所であり、子育てには欠かせない場所である。港区には「有栖川宮記念公園」や「高輪森の公園」「明治神宮外苑にこにこパーク」をはじめ、それぞれ特色のある公園がある。
■園庭開放など
平成22年度(2010年度)から、子ども同士や保護者同士の交流を図るために、「未就園児の会」を12の区立幼稚園において実施している。幼稚園の施設や園庭を開放し、未就園児が在園児と遊んだり、行事へ参加したりすることができる。幼稚園教育要領(平成10年告示)では、「幼稚園の運営に当たっては、子育ての支援のために地域の人々に施設や機能を開放して、幼児教育に関する相談に応じるなど、地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たすよう努めること」と規定され、この流れを受けたものである。区立保育園でも、「保育園であそぼう」として、園庭開放や行事参加の呼びかけを行っている。
■子ども家庭支援センターでの支援サービス
子ども家庭支援センターは平成12年(2000)4月に設置され、子育て相談や子育て支援サービスの提供、子育て支援ネットワークづくりなどを進めてきた。平成17年10月には、先駆型子ども家庭支援センターとして児童虐待への対応を開始、平成18年7月に港区要保護児童対策地域協議会の調整機関として、地域連携による支援を行っている。
活動内容は、児童虐待に限らず、子育ての総合相談窓口としての電話相談、訪問相談、面談の他、子育て講座やイベントの開催、乳幼児ショートステイ(宿泊保育)など、多岐にわたっている。
■障害保健福祉センターこども療育パオでの支援
区では、言葉が出ない、歩き始めが遅いといった状態にある子どもに対して、相談や指導、機能訓練を実施している。その窓口が平成10年(1998)に設置された、障害保健福祉センターこども療育パオである。支援内容には、次のようなものがある。
◎個別相談・支援(18歳未満の乳幼児および児童を対象に専門職が発達に関する相談に乗る)
◎通園事業(0歳から就学前の乳幼児を対象に、個別支援計画に基づき自立と社会生活への広がりを目指した療育を行う)
◎在宅訪問事業(0歳から就学前の乳幼児の家庭を訪問し、療育を提供する)
◎重症心身障害児通園事業(0歳から就学前で、医療的ケアが必要などの乳幼児の療育を行う)
◎学齢児グループ(小学生の児童を対象に、放課後を利用してレクリエーションなどの余暇活動を実施する)
◎就園児グループ(幼稚園・保育園に在籍している3~5歳児を対象に、安定した生活と物事に取り組む力の習得に向けた小集団活動を行う)
◎おもちゃ図書館(おもちゃや療育関係の図書の貸し出しを行う)
また、区立幼稚園では、障害保健福祉センターこども療育パオに通園している就園児グループの子どもを受け入れ、センターと連携しながら子どもの発達を促進する幼児教育を行っている。こども療育パオの詳細は第4節第4項(1)412ページを参照。
■児童虐待に関する相談
虐待とは、親または親に代わる養育者によって、子ども自身が心身に苦痛を感じる行為が行われることをいう。港区では、子どもが安全で健やかに育てられる権利を守るため、子ども家庭支援センターの「虐待相談専用ダイヤル」や「東京都児童相談センター」へいつでも連絡・相談ができるようになっている。
区の児童相談所への「相談内容別件数」によると、児童虐待相談は平成25年度(2013年度)以降急増し、平成29年度にはやや減少したものの、平成30年度には再び増加して514件となった。
[図24] 相談内容別件数
出典:港区子ども家庭支援部調査資料より作成
■経済的支援
保育園保育料は、世帯の区市町村民税所得割課税額と保育の必要量、幼児のクラス年齢により決められる。区では、保育料の減額を行っており、区民で、認可保育園や幼稚園、認証保育所などに兄や姉が在園、または事業を利用している場合、保育園に在園している第2子以降の保育料は無料となる(延長保育料は除く)。また、令和元年(2019)10月からは、幼児教育・保育の無償化がスタートし、幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳までのすべての子どもたちの利用料が無料となった。また、0~2歳児クラスの乳幼児について、保護者と生計を一にする子(小学生らを含む)を対象に、年齢の高い順から数えて2番目の子の保育料は半額となり、3番目以降の子の保育料は無料となった。