小学校の統廃合の変遷

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■年少人口の減少による統廃合
 概説で示したように、昭和40年代から平成8年(1996)にかけて港区の人口、子どもの数はともに減少し続けていた。それに対応し、昭和62年(1987)、港区立学校適正規模等審議会が設置され、昭和63年7月に中間答申、平成元年12月には「港区立学校の適正規模、適正配置及び通学区域についての基本的考え方並びに具体的方策について」の答申が出された。それを踏まえ、平成2年3月に「『区立学校適正規模等の答申について』の基本的方向づけ」が決定された。審議会の委員は大学教授や校長経験者らの学識経験者10人と、区立幼稚園や小・中学校のPTA会長経験者らの住民代表10人で構成された。
 「適正規模等」の「具体的方策」とは、区立小・中学校の統廃合である。すでに平成元年度に統廃合が行われた竹芝小学校・芝小学校に続き、答申に掲げられた基準[図1]に照らし合わせ、平成7年度にかけて芝地区や御成門地区、赤坂地区の小学校の統合・新設が行われることとなった[図2]。
 しかしながら、その間も定住人口の減少、特に15歳未満の年少人口減少の勢いは衰えず、平成2年3月に議決された「港区基本構想」でも「定住人口確保を区政の最重要課題」とせざるを得ず、その目標年次は「21世紀初頭」と先の見えないものだった。

[図1] 港区立学校適正規模等審議会答申に掲げられた基準
出典:港区ホームページ「小・中学校の適正配置」

 3地区の統廃合が終了した平成7年度時点でさえ、「港区としての小規模校」の基準を下回る幼稚園は9園、小学校は3校、中学校は4校に上っていた。そこで港区教育委員会は、平成7年、教育環境整備の具体的なガイドラインとなる「『区立学校適正規模等の答申について』の今後の取り組みの指針」を決定し、小規模校化を小学校・中学校それぞれの個別の問題とせず、小学校区・中学校区を含めた通学区域全体の問題として対応する方向性を明らかにした。それは、小・中学校の併置や小中一貫教育校新設の端緒となった。
 なお、御成門地区と赤坂地区で進められてきた小学校統合の結果、1校当たりの通学区域が広がり、通学距離は答申のほぼ上限まで達していた。そのため、それらの地区では「望ましい学校配置と通学区域」を維持するため、仮に御成門小学校や赤坂小学校が「港区としての小規模校」の基準を下回ることがあっても存続に努める、とされた。

[図2] 平成期の小学校の適正配置の推移
出典:『港区の教育』令和2年度版より作成

 
■竹芝小学校と芝小学校の統合
 竹芝小学校は、80年余りの歴史と伝統のある小学校だったが、年少人口の減少により昭和63年度(1988年度)の学級編制で1・2年生が在籍せず、全学年で41人となった。そのため、平成元年(1989)4月に芝小学校と統合することになり、その実施に当たっては地域住民や保護者への説明会が行われ、統合に対する不安や要望、意見を踏まえながら調整を行った。
 竹芝小学校の最後の卒業式当日には「竹芝小学校をはばたく集い」を開催し、統合後の芝小学校に児童が早く慣れ、共に学校をつくっていく気概が持てるように「竹芝小学校資料室」などを設置した。
 
■氷川、赤坂、檜町小学校の統合
 平成3年(1991)、区の年少人口の減少はさらに進み、全学年が単学級以下の小学校は7校に上り、その地域的偏在はより顕著であった。赤坂地区では、年少人口の将来動向を踏まえ、氷川、赤坂、檜町(ひのきちょう)の三つの小学校を可能な限り早期に統合し、この地区の核となる小学校を新設することを決定した。新たに設置する小学校は、檜町小学校の校舎を活用し、学校名は引き続き検討することとした。
 その中で、赤坂小学校は児童減が著しく、緊急な対応が必要との判断から、平成4年4月に檜町小学校と統合した。赤坂小学校の在籍児童は檜町小学校へ就学した。平成5年4月には、檜町小学校と氷川小学校を統合し、新たな「赤坂小学校」が設置された。
 
■明治以来の7校を統合した御成門小学校
 区内の年少人口減少の影響は、芝地区と御成門地区にも見られる。
 平成3年(1991)、100年以上の歴史を持つ小学校3校が統合された。日本最古ともいわれる明治3年(1870)開校の鞆絵(ともえ)小学校、明治10年開校の桜田小学校、桜小学校〔昭和39年(1964)開校〕である。桜小学校は、南桜小学校(明治10年開校)と西桜(さいおう)小学校(明治40年開校)を統合した学校であった。
 これら3校は、桜小学校を仮校舎とする御成門小学校として開校した。それでも全学級数6学級、児童数はわずか85人であり、答申の最低基準にさえ届かなかった。
 さらに平成6年、御成門小学校は桜川小学校(明治6年開校)を統合し、同時に西新橋2丁目の仮校舎から芝公園の校舎に移転した。地下1階、地上5階建ての新校舎は2階に校庭、屋上にプールを配し、港区初の仕切りのないオープン教室が採用され、道路をはさんで向かい合う御成門中学校とは2階の渡り廊下で結ばれた。
 そして平成7年、神明小学校を統合した。わずか5年の間に小学校5校、明治以来で数えれば7校を統合したことになる。御成門小学校の通学区域は、海岸、東新橋、新橋、西新橋、浜松町、芝大門、芝公園、虎ノ門、愛宕、麻布台に及ぶ広いものとなった。
 
■南海小学校と御田小学校の統合
 南海小学校は明治6年(1873)に東京府(当時)より「区内幼童学所」と称され、御田(みた)小学校も同じく明治6年に官名「第一大学区第二中学区第三番小学御田学校」と称され、どちらも120年を超える歴史のある学校であった。しかし、平成期に南海小学校の児童数減少が進み、平成11年(1999)には南海小学校の小規模化に対応する「三田地区の教育環境を考える協議会」が設置され、学校存続が検討された。その結果、平成12年4月の南海小学校と御田小学校の統合が決定、両小学校は廃止され、新たに御田小学校が設置された。
 
■飯倉小学校と麻布小学校の統合
 飯倉(いいぐら)小学校は、平成3年度(1991年度)に在籍児童数が84人となり、それ以後「港区立学校適正規模等審議会答申」に掲げられた小規模校の基準(安定して100人程度が確保できる規模)を著しく下回るようになった。平成13年度には在籍児童数が44人となり、2年生と3年生で複式学級が発生した。このため、飯倉小学校の教育改善に向けた検討を進めるようになったが、平成15年度には在籍児童数が36人となった。2年間の協議を経て、平成16年4月からの麻布小学校との統合が決定し、飯倉小学校は廃止されることとなった。
 
■芝浜小学校の新設
 港区人口推計(平成31年3月)によると、令和9年(2027)には30万人を超えると予想される。中でも年少人口(0~14歳)の増加率が最も高く、特に芝浦小学校の通学区域である芝浦地区や海岸地区の児童数の継続的な急増が見込まれている。平成30年度(2018年度)には現状で対応可能な36学級を超過(実態では33学級)し、ピーク時の令和17年の推計は学級数56、児童数2042人とされた[図3]。日本全体が依然として緩やかな少子化傾向にあるのに対し、都市部の中心に位置する区の特異的な傾向を見せている。

[図3] 芝浦小学校の児童数・学級数の推計
出典:「芝浦小学校の児童数増加に伴う学校施設整備説明資料」より作成

 今後の児童数の増加に対して現状の学校施設の改修だけでは対応できず、また地区内に新たな学校施設を整備できる十分な土地の確保の見通しは立たなかった。そこで通学区域や通学距離を考慮し検討を重ねた結果、区の複合施設「みなとパーク芝浦」の芝生広場(旧・文化・芸術ホール計画地)に(仮称)芝浦第二小学校を新設することとなった。普通教室24に加え、特別教室、屋上校庭、屋内体育館および屋内プールなどを整備し、名称を芝浜小学校と決定、開校は令和4年4月の予定である(令和3年12月現在)。
 なお、平成30年度までは多目的室やランチルームなどの改修により37教室を確保し、その後は新設小学校完成まで芝浦小学校の校庭に3階建ての仮設校舎を設置し、対応する。
 
関連資料:【文書】教育行政 東京都港区基本構想[平成2年4月刊]
関連資料:【文書】教育行政 港区立学校適正規模等審議会の設置
関連資料:【文書】教育行政 港区立学校適正規模等審議会の中間答申
関連資料:【文書】教育行政 区立学校適正規模等の中間答申に対する方向づけ
関連資料:【文書】教育行政 竹芝・芝小学校の統合問題
関連資料:【文書】教育行政 区立学校適正規模等審議会・最終答申(平元)
関連資料:【文書】教育行政 区立学校の教育環境整備の基本的方向づけ(平2)
関連資料:【文書】教育行政 <参考>港区立小学校の統廃合の経過
関連資料:【文書】教育行政 『区立学校適正規模等の答申について』の今後の取り組みの指針(平成7)
関連資料:【文書】小学校教育 区立学校の通学区域(平6)
関連資料:【文書】教育行政 竹芝小学校及び竹芝幼稚園の廃止
関連資料:【文書】教育行政 赤坂地区の学校教育の基本的方向づけ(平3)
関連資料:【文書】教育行政 赤坂小学校と檜町小学校の統合(平3)
関連資料:【文書】教育行政 氷川小学校と檜町小学校の統合(平4・5)
関連資料:【文書】教育行政 新橋・虎の門地区区立小学校・幼稚園の統廃合(平3)
関連資料:【文書】教育行政 桜川小学校と御成門小学校の統合(平5)
関連資料:【文書】教育行政 神明小学校と御成門小学校の統合(平5)
関連資料:【文書】教育行政 三田地区の教育環境の整備について(南海小学校と御田小学校の統合について)
関連資料:【文書】教育行政 港区立御田小学校・東町小学校施設整備に向けた基礎調査報告書
関連資料:【文書】教育行政 飯倉小学校の教育環境整備について
関連資料:【文書】教育行政 (仮称)芝浦第二小学校等施設整備基本構想・基本計画
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 区立幼稚園・小学校・中学校の適正配置の取組
関連資料:【図表および統計資料】教育行政 港区
関連資料:【学校教育関連施設】