開かれた学校づくりから地域とともにある学校づくりへ

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■学校開放
 港区教育委員会では、昭和52年(1977)に港区社会教育委員の会議に対し「学校開放の望ましいあり方について」諮問し、同会議では昭和53年7月に答申している。その内容では、学校教育を行う場である学校を一般的利用に開放することは「子どもたちにとって、勉強だけでなく、遊びやスポーツを通じての全人教育の場となり、また、地域住民にとって、学習機会や学習情報を得たり、スポーツや集会の行える場となるとき、それによって、学校と地域の、あるいは地域住民間の相互理解と交流は大いに深まり、地域づくりに寄与するところは、極めて大きいものと期待される」とされ、学校と地域が関わることで双方によい効果があるとしている。
 その後、昭和53年度の「学校開放推進経過、社会教育関係団体の育成」(報告)を経て、平成7年(1995)に全区立小・中学校が地域に開放されるようになった。
 
■学校ホームページの開設
 区立小・中学校がホームページを作成し始めた時期は、学校により異なるが、おおむね平成13年(2001)前後である。平成14年4月9日に開催された教育委員会定例会議の議案「平成13年度教育委員会懸案事項」の中で、「港区としての特色ある学校づくり」を進めるための課題として「パソコンやインターネット等を活用した情報教育の充実」が挙げられている。各学校のホームページ作成は、その方法の一つであるとして、支援のため「創意ある教育活動研究指導」と「一般需用費」を予算化した。
 この会議では、平成13年度当初には区立小・中学校のうち4校がホームページを開設しており、会議開催時点では12校に増加したと報告されている。また、引き続きの課題として、全区立小・中学校はホームページによる教育活動の発信を緊急に行う必要があるとしており、学校ホームページの開設が「開かれた学校づくり」および「港区ならではの特色ある教育活動」の中に位置づけられていることがわかる。なお、全区立小・中学校のホームページ開設は平成14年に完了した。
 
■学校評議員制度
 文部省(当時)は、平成12年(2000)に改正された学校教育法施行規則に合わせ、学校評議員制度を導入した。これは地域住民の学校運営への参画の仕組みを制度的に位置づけたもので、校長の学校経営方針をサポートするための有効な助言機関である。
 港区では、平成14年より制度として導入し、地域と学校がつながる回路を開いた。学校評議員は年に3回ほど会議を実施し、授業の参観、学校評価などに関わる協議、学校運営への意見提案などを行っている。平成17年度には、学校評議員会のさらなる充実と、地域・保護者にとって魅力ある学校づくりを目指し、東地区の区立小学校で学校評議員へアンケートを実施した。学校評議員からは、学校の魅力について「知育・徳育・体育のバランスのとれた教育活動を推進する」こととした回答が多く寄せられた。
 しかし、この制度は、学校教育法施行規則第49条で「学校評議員は、校長の求めに応じ、学校運営に関し意見を述べることができる」と記されている通り、その発言に拘束力はない。また、学校評議員の意見を学校教育にどう取り入れていくかは学校に任されており、集めた意見の活用については教育委員会でもたびたび議論されている(平成26年9月19日港区教育委員会定例会会議録など)。
 この学校評議員よりも、さらに踏み込んで地域と学校の関わりを強めたものが「学校支援地域本部事業」である。
 
■地域学校協働本部(旧・学校支援地域本部)
 平成18年度(2006年度)に改正された教育基本法に「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力の規定」が新設された。これは、学校に過剰な役割が求められている世の中の状況において、これからの教育は学校だけが役割と責任を負うのではなく、これまで以上に学校、家庭、地域の連携協力のもと進めていくことが不可欠〔文部科学省「学校支援地域本部に関すること(平成20~28年)」より〕とする国の方針によるものである。
 この方針に基づいて、平成20年、国は学校と地域をつなぐ拠点としての「学校支援地域本部」の設置を各都道府県に対して働きかけた。学校支援地域本部は、地域の人材を学校の中で活用し、地域全体で学校の教育活動を支えていくものである。
 区では、地域が学校を支える仕組みはできていたが、さらにそのつながりを深くするために、平成24年、教育委員会は学校支援地域本部事業の開始を念頭に、港区社会教育委員の会議に対して「学校教育を支援するための学校と地域の連携方策について」の諮問を行った。
 同会議は平成24年10月に答申を行い、その内容をまとめた答申(平成25年3月発行)「学校教育を支援するための学校と地域の連携方策について」で、区の特徴として、①豊富な人材資源、②育成団体等の実績の蓄え、③社会貢献を望む企業等の存在、があるとした上で、児童・生徒のよりよい教育環境を整備するために「児童・生徒が様々な人との関わりが持てる教育環境をつくることが必要」「地域の人々及び既存団体をつなぎ(コーディネートし)、学校を支援する仕組みづくりが必要」「教員が児童・生徒としっかり向き合う時間をより多くすることが必要」とし、港区学校支援地域本部の設置の必要性を答申している。
 こうした経緯の後、区では平成26年から学校支援地域本部事業(地域学校応援団)を開始した。
 これは学習指導要領の基本的な考え方(七つ)に基づいた13分野(言語、理数、伝統文化、道徳、体験、外国語、情報、環境、ものづくり、キャリア、食育、安全、成長発達)について、学校側が行いたいと思う内容(出前授業や職場体験)を地域学校協働本部に在籍する地域コーディネーター(学校と地域のつなぎ役)が、要望に合った地域ボランティア(企業・NPO・団体など)に依頼をかけ、実施までの調整を行う形で進められる。出前授業を提供する企業やNPO、法人などの登録数は、令和元年度で200以上に上る。

[図15] 地域学校協働本部事業イメージ
出典:「みなと学校支援情報」令和元年度版

 
 この事業は令和元年度(2019年度)からは事業名を「港区地域学校協働活動推進事業」と変更し、令和元年度には18の区立幼・小・中学校が活動を行っている(※2)。
 例えば、平成30年度の芝小学校においては、地域ボランティアが3年生の社会科で行う「町たんけん」で一緒に活動し、子どもたちの安全を見守った。また、毎週火・木・金曜日に実施している「15分間基礎学習タイム」で漢字や計算学習の点検作業を行った。いずれも子どもの活動が充実する取り組みとなった。
 
■コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)
 前述した学校評議員制度が拘束力を持たない制度であるのに対し、保護者や地域の人々が学校運営に意見を述べ、反映させることができる制度が学校運営協議会制度である。
 国は平成16年(2004)、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地教行法)に基づいて「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みとして、各校への学校運営協議会の設置を推進するようになった。この協議会を設置した学校を「コミュニティ・スクール」という。
 協議会の委員は、各区市町村教育委員会が地域の人材(保護者代表、地域住民、地域学校協働活動推進員や学識経験者)から任命し、構成される。地域学校協働本部事業と異なるのは、協議会がより深い形で学校教育に関わることができる点である。協議会の主な役割は以下の通り。
 ・校長が作成する学校運営の基本方針を承認する
 ・学校運営について、教育委員会または校長に意見を述べることができる
 ・教職員の任用に関して、教育委員会規則で定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる
 さらに平成29年には、地教行法に記された文言が「置くことができる」から「置くように努めなければならない」へと、より推進の方向への記述に変わっていった。
 こうした流れを受けて区では、平成31年4月、学校運営協議会制度を導入することになった。区独自の特色としては、幼・小・中をグループとしたアカデミー単位での学校運営協議会とすること(当時、幼稚園を含む複数校での学校運営協議会の設置は都内初)ができる点である。同年4月に設置したのは赤坂アカデミー[中之町幼稚園、赤坂小学校、赤坂中学校]とお台場アカデミー[にじのはし幼稚園、お台場学園(港陽小学校・港陽中学校)]である。さらに令和2年(2020)4月には、南山幼稚園と南山小学校で一つの学校運営協議会を設置している。
 こうして、学校運営は学校内という閉じた環境で行われるものから、学校と地域住民らが力を合わせて取り組むものへと転換が進んでいる。コミュニティ・スクールでは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことが可能となった。

[図16] コミュニティ・スクールの仕組み
出典:文部科学省ホームページ「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)」より作成

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