平成10年改訂・ゆとり教育

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 平成8年(1996)の中教審答申は、21世紀を展望して「生きる力」を育むことを重視する方針を打ち出した。中教審が具体的に示した「生きる力」とは、「いかに社会が変化しようと自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」「たくましく生きるための健康や体力」である。ゆとりの中で「生きる力」を育む観点から、学習内容や学習時間を削減する一方で、教育内容の厳選が提言された。答申を受けて、平成10年12月に学校教育法施行規則の一部が改正されるとともに、学習指導要領も改訂された。
 改訂は、以下の方針によって行われた。
  ①豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること
  ②自ら学び、自ら考える力を育成すること
  ③ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること
  ④各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること
 
 「ゆとりのある教育活動を展開」するため、小・中学校の学習内容を3割削減するとともに、授業時数も削減し、学校完全週5日制が実施されることとなった。また、児童・生徒の評価は「相対評価」ではなく「絶対評価」で行うこととした。こうした方針により、平成10年改訂に基づく平成14年度以降の教育は「ゆとり教育」と呼ばれることとなった。なお、「ゆとり教育」は広義には1980年代前半から開始された学習内容と授業時数の削減をいうが、今日、一般に理解されている「ゆとり教育」は、この年の改訂に沿って実施された教育をいう。
 平成10年改訂では、教育課程に「総合的な学習の時間」が新設された。自ら課題を見つけ、学び、考え、判断し、問題を解決する資質や能力を培うことや、学び方やものの考え方を身につけ、問題の解決や探究活動に主体的・創造的に取り組む態度を育てることを通して、自己の生き方を考えることができるようにすることを指導の目標とし、国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的課題や、児童・生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題について、実態に応じた活動を行うことを求めた。