教育目標の変遷

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 港区教育委員会は、未来の子どもたちを育むための教育目標を定め、毎年事務局が発行する冊子『港区の教育』に記載している。ここでは平成期の港区の教育目標のうち、主に学校教育に関わる部分の変遷を記述する。
 教育目標は、毎年の小さな文言の変更を別とすれば、平成期に大きく5回改定されている。最初の改定は平成6年(1994)に行われた。平成元年度の「港区教育委員会の教育目標」は、昭和末期のそれを引き継ぎ、学校教育の目標を「心の交流と自然や文化との触れ合いを通じて、自主性・創造性ならびに社会連帯意識に富んだ気品と知性と実践力のある幼児・児童・生徒の育成を目指した教育を推進する」と定めていた。
 
■平成6年改定
 平成6年(1994)に改定した教育目標では、基本的な考え方に、「歴史と伝統を継承・発展」の文言で「歴史と伝統」を、「港区の形成に貢献する」との文言で「社会への貢献」を重視する姿勢が新たに加わった。平成元年の学習指導要領の改訂で、「我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成」が重視されたことの反映といえよう。
 学校教育の目標は、「自他の生命を尊重し、勤労と責任を重んじ、自主性と創造性に富み、社会連帯意識をもった知性と感性の豊かな幼児・児童・生徒の育成を目指し、生涯にわたる学習の基礎を培う教育を推進する」と定め、「自他の生命の尊重」「勤労と責任を重んじること」「生涯学習」の三つの視点を新たに加えた。
 
■平成9年改定
 2度目の大きな改定は平成9年(1997)に実施された。教育目標に加え、「港区教育委員会の基本方針」として10項目を新たに定め、学校教育については、その6番目として「個性を生かす学校教育の充実」を掲げた[図17]。
 「個性を生かす学校教育」は、平成元年改訂の学習指導要領が示した方針である。また、社会の変化と時代の要請を反映し、心身障害教育の充実、情報教育、環境教育、消費者教育の推進など、新たな視点が加わった。

[図17] 平成9年改定 教育目標 基本方針6
出典:『港区の教育』平成9年度版

 
■平成15年改定
 平成15年(2003)の改定では、「地域の一員として、社会のルールを守る」という教育目標が加えられた。基本方針は5項目に変更され、平成10年度の学習指導要領の改訂を受け、学校教育に関する基本方針は2項目に増え、「生きる力」や「自ら学び考える力」を育成する姿勢を示した。学校教育に関係する基本方針とその細目を[図18]に示す。
 基本方針には「生きる力」「自ら学び考える力」の他に、新たに、「道徳教育」「ボランティア活動」「いじめ・不登校・問題行動」「カウンセリング」「防犯・防災」「喫煙」「薬物乱用」の文言とそれに関する記述が加わった。いずれも、21世紀に入り、社会的関心が高まった諸相の反映といえよう。

[図18] 平成15年改定 教育目標 基本方針2、3
出典:『港区の教育』平成15年度版

■平成17年改定
 2年後の平成17年(2005)にも教育目標を改定し、基本方針の細目に大きな変更があった。基本方針2の「魅力ある学校教育の推進」では、少人数指導の導入とITを活用した教育の推進が、基本方針の具体的目標に加えられている[図19]。

[図19] 平成17年改定 教育目標 基本方針2
出典:『港区の教育』平成17年度版

■平成28年改定
 平成28年(2016)の改定では、教育目標の提示方法が大幅に見直された[図20]。それまでの「教育目標」と「基本方針」は、「基本理念・目指す人間像」と「基本的方向性」とに改編され、「ライフステージごとの多様な学び」を基本理念とした上で、「目指す人間像」に「生涯を通じて夢と生きがいをもち、自ら学び、考え、行動し、未来を創造する人」を提示した。学齢期には「徳」「知」「体」の習得、夢をもち努力する心の育成、学びの基礎・基本の定着を基本理念とした。

[図20] 基本理念と目指す人間像
出典:『港区の教育』平成28年度版より作成

関連資料:【文書】教育行政 東京都港区教育委員会の教育目標(昭和56年度~平成5年度)
関連資料:【文書】教育行政 港区教育委員会の教育目標(平成7)
関連資料:【文書】教育行政 東京都港区教育委員会の教育目標(平成9~16年度)
関連資料:【文書】教育行政 東京都港区教育委員会の教育目標(平成17~23年度)